パパLOVE

卯月青澄

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「私、告白されてないよ。好きなんて言われてないし」

「言わなかったかもしれないけど、三枝の態度を見てたら普通気付くだろ」

「毎日のように教室に会いに来て、連絡先を聞かれて、誘われて、バイト先まで訪ねて来られて…好きじゃなきゃそんなことしないよ」

「好きって言えるチャンスが中々なかったんじゃないか。香澄は三枝のこと煙たがって相手にもしてなかったしな」

「好きって言われなきゃ、私わからないよ。1度も告白されたことないし、恋愛に疎いし」

「今更気付いても遅いけどな」

「でも、元々香澄ちゃんは三枝先輩のこと何とも思ってなかったんだから、気にしないよね?」

「そりゃそうだよ。ぜっ‥全然気にならないよ…」

気にならない訳がなかった。

生まれて初めて男子が私のことを好きだと知ったんだから。

私のどこを好きになったのか知らないけど、私を好きって思ってくれたことは嬉しかった。

それは、女子から人気のある三枝先輩じゃなかったとしても言えること。

どんな男子から好きだと思われても嬉しくない訳はなかった。

だとしたら、私は三枝先輩に何てヒドいことをしてきたのだろう。

いつも冷たい態度をとって、迷惑だと言ったり、顔を引っ叩いたりしてきた。

自分に好意を抱いてくれてる人に対して取り返しのつかないことをしてきてしまった。

「ちょっとトイレ行ってくる」

私は教室を飛び出し、廊下を走った。

階段を駆け下りて1階の下駄箱に向かった。

会える保証はない。

でも、会ってお詫びをしたい。

謝りたい。

そして、2年生の下駄箱前まで来ると、サッカー部の男子が次から次へと上履きに履き替えて私の横を通り過ぎて行った。

「西島さん…」

私の前に上半身裸で短パン姿の三枝先輩が現れた。

何故に裸…

しかも、右腕には大きなキズ…

「三枝先輩、私…」

「どうした?」

「先輩は私の…」

ここまで言って思いとどまった。

「私のことを好きだったんですか?」なんて聞ける訳ない。

そんなことを聞くほど馬鹿じゃないし、聞いてどうなるという思いが脳裏をよぎってやめといた。

もし、舞香と詩美が言うように、三枝先輩が私のことを好きだとしても、私が好きなのはパパだけで他の人を好きになる隙間は1ミリたりとも残っていない。
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