パパLOVE

卯月青澄

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「うまっ! お肉は柔らかいし、タレは美味しいしサイコー」

ママは終始満面の笑みで焼き鳥とビールを堪能していた。

本当に幸せそうな顔をしている。

「香澄も食べれば」

「私は沢山食べてきたからお腹いっぱい」

「そう、なら全部食べちゃうよ」

「どうぞ」

そしてママは全てを平らげたあと、余計にお腹が減ったと言って、インスタントラーメンを作って食べていた。

もちろん、ビールも3缶目に突入しているのは言うまでもないけど…。

「香澄、今度一緒に焼き鳥を食べに行こうか? 鶏兵衛って言ったっけ?」

「うん、ママと行きたい。一緒に行こうよ」

「じゃあ、香澄のバイトがない日に行こう。場所だけ教えてね」

「うん…」

本当にママは鶏兵衛のことは記憶から消し去ってしまっているようだった。

て言うか、それもそうなんだけど、私が誰と鶏兵衛に行ったのか聞かないんだ。

何で聞かないの?

もしかして私とパパが一緒だったことを知ってる?

でも、それを知るすべはないはずだし…。

パパがママに言う訳ないし、連絡を取り合っているなんて話は2人から聞いたこともないし…。

それに私は見た。

パパのスマホの発信履歴と着信履歴を。

どちらにもママの名前はなかった。

だとしたらママは私が誰と鶏兵衛に行ったと思ってるんだろう?

今回に限ったことじゃない。

最近の私が明らかに誰かと会って出掛けているのに気付かないママじゃない。

もしかして私に彼氏が出来たと思っているんだろうか?

でも、もしそうだとしても、何も首を突っ込んでこないのはおかしい。

真っ先に色々と聞いてくるに違いないし、黙って見ているようなママじゃない。

ちょっと探りをいれてみようか。

でも、「誰と鶏兵衛に行ったと思う?」なんて聞いたらママが答えをハズした時に正解を言わなくてはならなくなる。

「私が誰かと付き合っていると思ってる?」そんなことを聞いても答えは誰とも付き合っていない訳だから、だったら誰と最近出掛けていたのかという話になってしまう。

なんて聞いたら良いのかわからなくなった。

そんなこんなで、結局は何も聞き出せないままママは酔っ払ってソファーで眠ってしまった。
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