パパLOVE

卯月青澄

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「あっ‥ありがとう」

パパは一瞬戸惑い、動揺しているように見えたけど、直ぐにいつものパパに戻った。

だから私も普段どおりにした。

別に変なことをした訳ではないし、恥ずかしがるようなことじゃないよね。

「送ってくれてありがと」

「全然大丈夫。明日はバイト?」

「うん」

「パパは明日から1週間は仕事で地方に出張になるから家には帰らないんだ」

「会えないの?」

「そうなっちゃうね」

一週間も会えないと思ったら胸が締めつけられるように苦しくなった。

同時に涙も溢れてきて、今にも目から流れ落ちそうになった。

「会いたいよ」

「パパだって香澄に会いたい。少しの辛抱だから我慢してくれる?」

「ヤダっ」

「香澄…」

「絶対イヤ。仕事なんていいから早く帰ってきて。香澄に会いに来て」

「香澄…」

我慢していた涙が抑えきれずに目から溢れ出してしまった。

そんな私の涙を見て、パパは目に涙をためて堪えているのがわかった。

これ以上パパを困らせては駄目だ。

パパだって私に会いたいに決まっている。

私だって我慢しなきゃいけない。

「ゴメンね、ワガママ言って。香澄、我慢する。一週間くらい何とか我慢する」

「ありがとう。電話もするしメールもするから。寂しい思いはさせないから」

「うん…」

パパは私を手繰りそせて優しく抱きしめてくれた。

こんな風に優しく抱きしめられたのは初めてだった。

そうか、パパは香澄のことが大好きなんだ。

愛してくれてるんだ。

だからこんな風に抱きしめてくれるんだ。

そうか、そうなんだ。

それでも別れるのは悲しくて、また明日から一週間会えない悲しさが込み上げて、パパの胸の中で声をあげて泣いてしまった。

だからパパと別れるのに10分以上はかかってしまった。
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