パパLOVE

卯月青澄

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『もしもし』

『・・・・・・』

女性の声が聞こえてきた。

結構若い感じの声だった。

コイツがパパにちょっかいをだしている女か…。

『もしもし、あきらさん』

『・・・・・・』

あきらさん?

何馴れ馴れしく名前で呼んでるの。

『もしも~し』

『・・・・・・』


「香澄、香澄もお風呂入っちゃえば」

遠くから私を呼ぶパパの声が聞こえてきたので、慌てて電話を切って、スマホを元あったテーブルの上に戻した。

それから間もなくしてパパは廊下からリビングに入ってきた。

危なかった…。

それにしても、沙織という女はパパと一体どういう関係なんだろう?

パパを名前で呼んでいたことを考えると、結構親しい間柄の可能性は高い。

彼女とは思いたくない。

彼女だったなら絶対に許さない。

パパは私だけのパパ。

誰のものでもない。

私だけのもの。

「わっ‥私は家に帰ってから入るから大丈夫だよ」

「そう。そうしたらご飯食べに行こうか?」

「うん」

パパの支度が済んでからパパの行きつけの居酒屋に向かった。

そこは駅に向かって歩いて10分くらいのところにあった。

駅へのメインストリートから路地裏に入らないと見えない決して気付かないような場所にあり、秘密の隠れ家的なお店だった。

私の家からも同じくらいの時間で来られる距離にあった。

店の外には焼き鳥を焼いている良い香りが漂っていて、より一層食欲がそそられた。

そして店に入ると既に7割くらいの席がうまっていて、店員さんにテーブル席に通された。

「先に何かお飲み物をお持ちしますか?」

「僕は生ビールを大ジョッキで。香澄は何飲む?」

「私はぶどうサワーのアルコールなしで」

「あとは、焼き鳥を適当に10本持ってきて」

「かしこまりました」

店員はカウンターに戻ると、数分で飲み物を持ってきてくれた。

「パパはこの店はよく来るの?」

「週1は必ず来てるかな。ここに来る時は大抵1人の時が殆んどかな」

「パパはもっとオシャレなBARとかで飲んでるのかと思った」

「パパはこういう居酒屋の方が落ち着くから好きなんだ」

「ふ~ん。他に誰かと来たことあるの?」

「それは…」

パパが言葉をつまらせたので、その答えはきっとママなんだとわかった。

「ママと来たことあるんだね?」

「うん…ママもこの店の焼き鳥が好きだったんだ」

パパはそう言うと、飲みかけのビールを一気に飲み干してしまった。

触れてはいけない過去だったかな?

「だったら、今度ママと来てみようかな?」

「きっとママも喜ぶよ」

そんな話をしていると、焼き鳥の盛り合わせが運ばれてきた。

タレの焦げた香ばしい香りが鼻をついた。

「美味しいから食べてごらん」

「うん、いただきます」

私は焼き鳥のももを手に取ると、それを口いっぱいに頬張った。
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