パパLOVE

卯月青澄

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教室の中に入って、自分の席に目を向けるとお弁当を頬張りながらこちらを心配そうに見つめる舞香と詩美と目が合った。

「何て言われたの?」

「放課後に話がしたいって」

「それで何て答えたんだ?」

「バイトがあるから忙しいって言った」

「香澄ちゃん、バイトしてるって言っちゃったの?」

「バイト先まできちゃうんじゃないのか?」

「かもしれない」

「でも、場所は教えなかったんだよね?」

「知ってた」

「知ってた?」「知ってたの?」

「うん…」

舞香と詩美は驚いた顔をして見つめ合っていた。

「何なんだアイツ」

「ちょっと怖いよね」

「でも、大丈夫。気にしないで」

「気にしない訳ないだろ」

「そうだよ、心配だよ」

「ありがと。この話はおいとこう」

それから3人でお昼の続きを食べた。

「香澄ちゃん、写真撮らせて」

お弁当を食べていると、突然スマホを私に向けた舞香がそう言ってきた。

「いいけど、食べてるところ撮るの?」

「何かカワイイポーズして。こんな風に」

舞香は両手で顔を挟むようにしてハートを作るポーズをしてみせた。

「何それ?」

「ルダハートって言うんだよ」

「へぇ~」

初めて聞いた。

でもかわいいポーズ。

私がするより舞香がしている方がよっぽどかわいいのに。

「知らないのか? うちだって知ってるぞ」

詩美はそう言うと、私に向かってルダハートのポーズをやってみせた。

「詩美でもそんなことするんだ」

「うちを何だと思ってるんだ。これでも一応女子高生なんだけどな」

「そう言えばそうだった」

私は詩美のうしろ髪を撫でたあと、詩美の両頬に私の手でハートの形を作ってみた。

「かわいい。2人共こっち向いて」

舞香はそんな私と詩美の姿をスマホで写真に収めていた。

そして私に抱きつき頬に口づけをしたあと、頬に鼻を押し当てて思い切り息を吸い込んでいた。

「いい匂い」

「何それ? 何の匂いがするの?」

「香澄ちゃんの匂い。大好きな匂い」

「変なの」

「うちも嗅がせて」

詩美はそう言うと、もう片方の頬に鼻を押し当てて息を吸い込んだ。
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