パパLOVE

卯月青澄

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「店長いつも大変ですね」

愚痴ばかり言っている先輩が事務所から出て行ったので、うしろから店長に話しかけてた。

「まぁこれも、僕の仕事だからね」

「たまにはガツンと言ってやった方がいいですよ」

「西島さんも、嫌なことがあったら何でも言ってもらっていいから」

「私は…特にないですよ」

そう言って事務所から飛び出し仕事に入った。

私の今日の担当はお客がテーブルのタブレットで注文して出来上がった料理を運ぶ仕事と、食事を終えたお客のテーブルを片付ける仕事。

これを繰り返していると、時刻は20時を回っていた。

あと1時間で仕事は終わる。

もうひと踏ん張りだ。

そうして仕事をしていると、入口から1人のお客が入って来た。

「パパ…」

他のスタッフがパパを席まで案内をしようとしていたので、横から割って入って「私が案内する」と言った。

スタッフの松本さんは私に案内を任せて仕事に戻って行った。

「パパ、どうしたの?」

私がパパの手を握ってそう言うと、パパは「香澄に会いたくなってね」と返してきた。

その言葉はどんな言葉よりも嬉しかった。

「来るならメールで言ってくれれば良かったのに」

「娘のバイトに親が来るのは嫌がられると思ったんだ」

「別に嫌じゃないよ」

「それなら、良かった」

それからパパの手を握りしめたままを席まで案内した。

「バイトは何時まで?」

「21時まで」

「終わったら、ここで一緒に夕食でもどうかな?」

「ホントに?」

「それまでコーヒーを飲んで待ってるよ」

「あと少しだから待ってて」

そして仕事に戻ったけど、パパに頑張って働いてる姿を見せたくて、いつも以上に張り切った。

ことあるごとに席にいるパパを見ては手を振った。

その度にパパは優しく微笑んで軽く手をあげてくれた。

何だか授業参観に来てくれた父親と娘のやり取りのように感じた。

21時までの私は今までに見せたこともない働きっぷりで、他のスタッフを驚かせていた。
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