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お嬢様は謙虚堅実!?

第37話 逆転劇 B

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「魔法の無断使用に殺人未遂……また罪を増やしたな。────ミルフェラ・ホールデン。…………呆れて、ものも言えん」

 第三王子ヤコマーダ・ガルドルムがそう言いながら、ミルフェラに近づく。

「私はこの者との婚約を破棄する! ────そして、ミルフェラ・ホールデンの身分をはく奪し、国外追放処分とする!! ……この処置は、すでに帝王陛下の内諾を得ているものだ」


 王子は声を張り上げて、そう宣言した。

 ミルフェラに対してだけではなく、会場に集まった舞踏会の参加者全員に周知する為だろう。



「異論のある者はいるか────? 今回の決定に不服がある者は、速やかに前に出て申し出よッ!!」

 …………。

 ……誰も前には出ない。

 この状況で、彼女を庇うバカはいないだろう。 

 大広間は静まり返った。
 

 いや、ミルフェラ・ホールデンの泣きじゃくる嗚咽だけが響く────


 そして彼女は私を睨みつつ、怨嗟の言葉を紡ぎ出す。

「なっ、なんでっ、私がッ、こんな目にッ……。お前のッ、お前のせいだっ!! うッ、うぐっ、────。…………許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、絶対に許さない。────お前のせいで、私は……、お前さえいなければ…………復讐してやる。────思い知らせてやる。絶対に、復讐してやる」

 ぶつぶつと、小声で私に対する恨み言を繰り返している。


 ────不気味だわ。

 早く連行して欲しいのだけれど、王子の指示がないのでそのままだ。







 ヤコマーダは大広間をゆっくりと見回して、異議申し立ての無いことを確認する。


 それから────

 王子は元婚約者に、最後の引導を渡した。


「この犯罪者を、連れて行け!!」




 王子がそう宣言した直後────

 信じられないような、逆転劇が始まる。




 突如として、頭上から、幾筋もの光が差し込んだ。

 その光は、ミルフェラに注がれている。

 王宮の大広間に、ざわめきが起こる。

 『……奇跡だ』という声も、そこかしこから漏れてくる。

 
 ────そして奇跡は、それだけでは終わらない。

 降り注ぐ光と共に、三体の『化け物』が姿を現す。

 …………。

 ……。

 化け物の出現と同時に────

 大広間にいたすべての人間に、恐怖がバラまかれた。





 教皇ニヤコルム・ヤコームル十五世が『化け物』に対し、慌てて膝をつき、首を垂れる。


 そして────

 『天使様……』と、呟いた。




 「くっ……」

 このタイミングで、出てくるとは────

 私が赤ん坊の時に、馬車を襲ったあの化け物たちが……。





 大広間が静まり返る。

 その場に集まっている人間を見渡し、『天使』が高らかに宣言する。 

 『ミルフェラ・ホールデンを聖女と認定する』

 
 どうやら────
 あの悪役令嬢が、帝国から追放されることは無さそうだ。

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