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お嬢様は謙虚堅実!?
第35話 婚約破棄と国外追放 B
しおりを挟む「話にならんな……」
そう呟くと、王子は周囲を見渡し──
「見ての通りだ! この者はフィリス嬢が『国を滅ぼそうとしている』などという妄想を信じ込み、暗殺組織に彼女の殺害を依頼した。────暗殺は失敗に終わったが、ミルフェラが殺人未遂という重罪に手を染めたことに変わりは無い。────この女には、到底、王子である私の伴侶は務まらない……よって、この者との婚約を破棄し、ミルフェラ・ホールデンを国外追放とする!!」
そう宣言した。
宣言した直後に王子は、側にいた初老の男に確認を取る。
「異論は、ありませんね……? ニヤコルム教皇猊下──」
「────ありません。委細承知いたしました」
初老の男は、ヤコムーン教の最高指導者だった。
王子は『ニヤコルム・ヤコームル十五世』に、婚約破棄と侯爵令嬢追放の確認を取り、了承された。
教皇がこのような舞踏会に、顔を出すことはまず無い。
婚約破棄と追放のために、王子があらかじめ用意していたのだろう。
……。
…………。
王子はどうしても、侯爵令嬢ミルフェラと結婚したくなかったようだ。
────凄い執念だわ。
宴もたけなわ────。
悪役令嬢の婚約破棄、それと国外追放が決定した。
第三王子は教皇ニヤコルムまで出してきた。
そして、婚約破棄と国外追放が承認されたのだ。
ここからの逆転は、考えにくい……。
ほぼ決定と言っていいだろう。
……。
…………。
婚約破棄に、国外追放……。
────定番のイベントである。
前世の私はあまり漫画や小説は読まなかったが、それでも『よくある展開』として知っている。そのくらい創作物では、ありきたりなものだ。
だが、実際にそれが目の前で起きると、インパクトが違う。
この世界の貴族社会は、階級と身分でガチガチに固められてる。
権力者ほど、それを守ろうとする。
────ひっくり返ると、自分が困るからね。
王子と侯爵令嬢の婚約が破棄されるなど、余程のことがない限り起こるものでは無い。
それほどの事が、目の前で起きているのだ。
大広間に集まっている舞踏会の参加者たちの間にも、驚きと動揺が広がっている。
第三王子の婚約破棄は、政治の世界の勢力図を大幅に書き換えることになる。
教皇や帝王の了承だけではなく、ホールデン侯爵家にも根回しがなされているかもしれない……。
婚約破棄された悪役令嬢ミルフェラの取り巻きたちが、さりげなく彼女から距離をとり出した。どうやら、旗色が悪いと感じた取り巻き達は、ミルフェラを切り捨てにかかったようだ。
────代わりに彼女の護衛達が、ミルフェラの周囲を固める。
侯爵家の護衛達の動きからすると、王子はホールデン家に話を通していないようだ。
……ちょっと、詰めが甘かったようね。
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