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お嬢様は謙虚堅実!?
第34話 ヒロインの秘密 B
しおりを挟む最後に、私の本名────
私のフルネームは、フィリス・ライドロース・フロールス。
フロールスというのは、六百年前にガルドルム帝国に滅ぼされた王国の名前である。そして、帝国との戦争に敗れたフロールスの王族や上級貴族は、根絶やしにされたことになっている。
表の歴史では、そうなっている。
────だが、裏歴史では、そうではない。
ライドロースのお城の書庫には、沢山の蔵書が眠っていた。
その中には、とても公表できないようなものも多くある。
私はそれを読み、自分の血筋について知ることになった。
ライドロース家が帝国に滅ばされたはずの、王家の生き残りであると……。
帝国の歴史の記述は、帝王やヤコムーン教にとって、都合の良いように改変され
ている。
ライドロース城に眠っていた書物に書かれていたことが、必ずしも正しいとは限らないが、当時の王家の生き残りの残した日記の内容は、真に迫るものがあった。
自分たちにとって都合の悪い事を書き残したくないと思うのは、どちらにもあるだろう。
そういった心理を差し引いて、複数の書物の記述を読み比べて、私は独自に歴史の真相に迫っている。
フロールス王国最後の総司令官だった『デリル・グレイゴール』が、その知略を用いて、王族を密かに生き残らせることに成功したのだ。
その末裔が、私という訳だ。
私は帝国に滅ぼされたはずの、王家の血を受け継いでいる。
滅びたはずの、王家の生き残り────
これも、知られるとマズい情報である。
ぶっちゃけ戦争の引き金になる。
…………。
……。
悪役令嬢は自信たっぷりだ。
あの様子からすると────
この三つの秘密の内、どれかを掴んでいるからに違いない。
ミルフェラは、私の秘密を握っている。
だからこそ、私を殺害しようとして、それがバレてもあんなに堂々としていられるのだ。
…………くっ。
……ヤバいわ。
────どれだ?
どの秘密が、知られている────?
もしかして、全部……?
私は手に汗握りながらも、それを顔には出さない。
しかし、内心はドキドキだ。
こんなピンチに陥るなんて────
どれか一つでも知られていれば、形勢逆転だ。
私のこれからの人生は、一気に破滅ルートに突入するだろう。
彼女がどの秘密を暴露するのかを、固唾を呑んで見守る。
悪役令嬢ミルフェラは、大仰な身振りで私を指さす。
そして、私の罪を告発した。
「あの小娘は、……恐ろしいことに、『魅了魔法』を使うのです!」
……ん?
「────卑劣な魅了魔法を使って、男を片っ端から洗脳しているのです。あいつは、フィリス・ライドロースは…………魅了魔法で洗脳して────男に囲まれ、チヤホヤされて、ふんぞり返っているのよ!!」
……何言ってんの、こいつ?
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