お嬢様は謙虚堅実!? ~生まれながらにカリスマが限界突破していた少女と偽神に反逆する者達~

猫野 にくきゅう

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お嬢様は謙虚堅実!?

第31話 悪役令嬢の反省会、再び A

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 私とジャックとベルは、暗殺者の襲撃を切り抜け、庭を進む。

 庭を抜けてからパーティー会場に戻るまでに、廊下にもう一人暗殺者が潜んでいて襲われた。
 手口は先ほどと同じで、毒の付いた投げナイフでの攻撃だった。

 その攻撃もベルが未然に防いで、犯人も確保している。


 大広間に戻ると、ホールデン侯爵が近寄ってきて、『どうでしたか、私の自慢のコレクションの数々は────?』と言い、自慢げに感想を求めてきた。


 人を殺そうとしておいて、これである。

 ────流石は、大貴族だ。

 面の皮が厚い。


 私は無難に、美術品を褒めておいた。 


 ……。


 あの様子からすると、侯爵は暗殺計画に加担していなかったのかもしれないわね。

 でも────
 私にはそれを確かめる術はないし、この屋敷で命を狙われた事実も変わらない。

 どっちにしろ、ホールデン家は私の敵だ。

 私は小さくため息をついた後で、食事を再開する。

 お嬢様のくせに意地汚いと言うなかれ────
 せめて、このくらいの『美味しい思い』をしなければ、割に合わないのよ。

 私は元を取るように、美味しい料理を堪能した。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ……なっ!!

「失敗、ですって……?」

 私はあの目障りな小娘を始末する為に、大金をはたいて、名うての暗殺者を雇った。


 なのに、失敗だと────?

 今日はあの、可笑しな格好をした奇術師は居なかったはずだ。



 お父様にお願いして、パーティーを開き、あの小娘を呼び寄せて貰ったというのに、失敗ですって……?


 ……。

 …………。

 お父様には、『生意気な小娘が、私の婚約者のヤコムーン様を誑かそうとしているので、格の違いを見せつけて欲しい』とお願いした。

 そして、誘き寄せたあの小娘を始末する手筈は、こちらで整え暗殺を実行した。
 私の好きに出来るお小遣い、金貨500枚を全て注ぎ込んだ計画だった。

 暗殺組織に支払う成功報酬の残りは、あの女を始末してから、お父様に用立てて貰う算段だった。

 ────計画は完璧だった。
 

 なのに……。
 合計で金貨2500枚、その金額で雇った暗殺者が失敗……?


 今日の小娘の護衛は、いつもの変質者ではない。
 その報告を聞いた時、私は飛び上がって喜んだ。

 暗殺の成功率が、飛躍的に上昇したと思った。



 これであの薄汚い泥棒猫を、地獄に叩き込むことが出来る。
 
 人の男に手を出した報いを、受けるがいいわ!!


 そう思って喜んだ。 

 私はワクワクしながら、暗殺成功の知らせを待った。


 …………。

 ……。

 だというのに……。

 あの奇術師さえいなければ、確実に成功すると思っていたのに……。


 失敗、だと……。

 ブルブル、ブルブル……。

 ────私の身体が、怒りに震える。


「暗殺を失敗した無能を、殺しなさい。────そして、別の者に業務を引き継がせなさい。なんとしても、あの女を殺すのです!! もう報酬は支払っているのよ? 雇ったのはプロの暗殺者なのでしょ? 料金分の仕事は、きっちりして貰います。────残りの暗殺者全員を、あの田舎者の住まう掘っ立て小屋に送り込んで、生意気な顔を、ズタズタに引き裂いて殺しなさい!!!!」


 私は激情に駆られて、一気にまくしたてた。

「はぁ、はぁ……」

 息が切れる。

「……ふぅ」

 私が落ち着くのを待ってから、執事のベンジャミが口を開く。


「お嬢様、今回屋敷に配置した三名の暗殺者は、……現在、『行方不明』となっております。ホールデン家内部に立ち入らせるのですから、暗殺者にも監視を付けておりました。────監視を担当した者達が言うには、暗殺者はいずれも『忽然と』姿を消した。────とのことでございます」

「…………消えた?」

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