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お嬢様は謙虚堅実!?
第29話 ラシェールの目的 B
しおりを挟む「帝都が滅びるって、なんでよ?」
地震でも起きるのかしら────?
でも、それにしたって……。
「────だって、ルドルおじさまが『滅ぼす』と仰ってましたから、滅びますわ。────まあ、『最悪の場合は』と付け加えていましたけれど……」
あいつ、そんなこと言ってたの?
そう言われてもね。
う~ん……。
帝都を滅ぼすと言われても、イメージが湧かないのよね。
「ルドル様がそう仰っているからと言って、移住を促すのは難しいわね」
あの男がどういうつもりでいるのかは分からないが、『帝都を滅ぼそうとしている男がいる』なんて話を、馬鹿正直に、人に言えないわよね。
「ええ、そうですの。────そんな話をすれば、即座に通報されますから、言えません。ですので────今は種を蒔いている段階ですの。現時点で乗り気でなくとも、おじ様が帝都を壊滅させた後なら、きっと応じて下さいますわ」
ラシェールはそういった後で、おなじみの高笑いを上げる。
おーほほほっ────
ちょうどその時、あいつが庭を通りかかる。
私の方を見て──
「お前はやらないのか────?」
と聞いてきた。
……。
やらないわよ!!
こいつは私の、『若気の至り』を見ている。
私はもう、十歳なのよ。
高笑いをするような年齢じゃないわ!!
あの時のことを思い出し、私の顔が赤くなる。
……うぅ。
私はそっぽを向く、そしてあいつに────
「……フンッ!」
と言ってやった。
「なんだ、照れてるのか? ────揶揄って悪かったな」
あいつはそう言うと、私の頭を撫でてきた。
私の顔が、ますます赤くなる。
あいつは少し、困ったような顔をする。
「子供の相手は、難しいな────」
そんなことを言い出した。
なによ、偉そうに!!
そう思ったけれど、私はコイツの手を振り払わない。
大人しく、撫でられておいてあげることにした。
この程度の事で、怒ったりはしない。
それが大人のレディというものよ。
おーほほほっ!!
ラシェールの高笑いだけが、庭に響いていた。
────次の日。
ルドルは予定通り、ラシェールの護衛で下町に行っている。
私は執事のジャックを護衛に、ホールデン家のパーティに向かっている。
ホールデン家から、パーティへの誘いが来たので出かけている所だ。
馬車の御者は、ライドロース家の使用人が担当している。
風の妖精のベルも一緒だ。
この子は、ルドルが私の傍を離れる時は、いつも一緒にいてくれる。
今日はミルフェラからではなく、ホールデン家の当主からの直々の誘いだった。
何が待ち受けてるのかしら────?
私の心配と不安を乗せて、馬車は進む。
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