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お嬢様は謙虚堅実!?

第26話 毒見 B

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 私に出される料理の毒見を終えたルドルが、料理と共に私の元に戻る。


 小声で私に、結果を伝えた。

「今度の毒は、致死量を超えたものだ……」


 ────あら、まあ。

 私が平然としていたのが、気に食わなかったのだろう。
 今度は、問答無用で殺しに来た。

 ……沸点が低いわね。
 なんて、短絡的なのかしら。


 私は呆れながら、どうしたものかと悩む。
 
 恐らくミルフェラの狙いは、毒見役のルドルを殺す事だったのだろう。
 護衛を殺すことで、私にプレッシャーと、痛手を与えたかったのだ。
 


 毒見役の護衛が死ねば、ホールデン家が毒を盛ったと非難される。

 だが、この場ではそうはならない。


 ライドロース家の護衛が、『急病』で急死した出来事として処理される。
 この場の、私以外の全員が、それを支持する。


 ミルフェラが責められることは無い。

 逆に、連れて来た護衛が急死したせいで、ホールデン家に迷惑をかけたと、私が攻められることになる。


 その場合、被害者であるはずの私がミルフェラに頭を下げて、謝罪しなければならなくなる。

 それが、貴族としての生き方だ。


 『正しさ』というのは、力があってこそ保護される。

 ライドロース家とホールデン家の力関係は、歴然としている。
 さらにここは敵地、周りは敵だらけの状況だ。
 
 圧倒的に、向こうの方が強い。
 力が無ければ、正しさなど意味をなさない。

 



 力こそが正義と言わんばかりに、ミルフェラは致死性の毒を盛ってきた。

 だが、私の毒見役のルドルは、死ななかった。
 ────平然としている。

 ミルフェラにとっては、想定外でしょうね。

 この男は規格外の化け物なので、この程度の毒は効かないのだ。
 毒見役が死ななかったので、毒入りの料理が、私の前に並んでいる。

 …………。

 ……。

 



 毒を盛られたと騒ぎ立てても、こちらが不利────
 だったら……。

 私は毒入りの料理を、頂くことにした。


 あいつほどではないが、私も毒にかなり耐性がある。

 それに────
 いざとなれば、ルドルの回復魔法という保険もある。



 私は優雅に食事を切り分けて、口へと運ぶ。

 ルドルがニヤリと笑い、『鍛錬を選んだか────』と呟いた。
 ……いや、私は毒の耐性を上げたくて、食べるんじゃないのよ?

 誤解を解くのは面倒なので、護衛の勘違いは放っておいて、そのまま食べる。



 先ほどの少量の毒とは違い、今回の毒はきつかった。


 身体にかなりの異変を生じさせる。
 ────でも、私はそれを、決して表には出さない。
 
 食事を食べ終え、笑顔を振りまく。


 世界一の美少女の、世界一の笑顔だ。
 それを見たご令嬢の何人かは、うっとりとしている。

 私の笑顔は同姓であろうと、お構いなしに虜にしてしまう。



 ……。

 致死性の毒に耐え抜いて、敵をも魅了する。 

 ────私もまた、化け物なのよね。


 自嘲するように、そう思う。

 ミルフェラだけが悔しそうな顔で、私を睨みつけていた。
 

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