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お嬢様は謙虚堅実!?

第25話 身辺調査 B

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 私は調査を開始する。

 コミュニケーションを取りつつ、相手の事を知ろう。
 ────まずは、そこからだ。 


 私は『今日のメニューは、何かしら────?』と、ルドルに話しかける。
 以前ホールデン家にお呼ばれした時に出された料理を上げて、自分の好みの料理の話をする。
 
 ホールデン家は侯爵家なだけあって、高級食材を揃え、豪華な料理を提供してくれる。……そして、ミルフェラがそれを自慢し、私を蔑む材料に使う。

 私は彼女の皮肉を笑顔で受け流してやり過ごしていたが、料理自体は美味しかったので、じっくり堪能していたのだ。



 ────ここからさりげなく、話題を変えましょう。

「それで、────ルドル様は……どんな食べ物が、お好きなのかしら? ────そう言えば、大人になると味覚が変わるという話を聞きました。本当かしら? ルドル様はどうですか? ……子供の時、どんな食べ物が好きでしたか────?」


 …………。

 ちょっと、強引だったかしら────?


 私が知りたいのは、この世界でのコイツの子供時代の話だ。

 自分の事を語った後で、相手のことを聞く。
 流れ的には自然だけれど、多少強引だった……。




「────子供の時の、好きな食べ物か…………。基本は何でも食ったな──美味そうに感じたものは、何でも、────と言っても大半は、魔物の肉だったが……そうだ! しいてあげるなら、林檎だな。あれは旨かった。一本の木になっている実を、葉っぱと枝ごと、夢中で食べた。……その後、死にかけたが……。────ああ、そうだ。何でも食べると言ったが、人は食わなかったぞ。不味そうだったからな」

 ……葉っぱ、人、魔物?
 不穏な単語が、沢山出て来たわ。

 ────ほんと何なのよ、こいつ??


「……まあ、そうですの?────えっと、ルドル様は小さな頃から、逞しかったのですね──素敵だわ」

 どの辺がステキなのかは、解らないが────

 返答に困ったので、取り敢えず、無難に褒めておいた。
 想定外すぎる答えが返ってきたので、これが精一杯の対応だ。



 葉っぱや枝ごと、林檎を食べるって何────?
 人を食わなかったって、『人を食べる』なんて選択肢、餓死寸前の人間にしか出てこないわよね?

 ……そんな状況に、陥っていたってこと??

 ────あっ!
 ひょっとして、吸血鬼だから『人を食べる』=『人の血を飲む』という意味合いで言ったのかしら?

 でも、不味そうだったって……。
 ────う~ん、謎ね。

 まあ、ただ、コイツの幼少期が、過酷なものだったと知ることは出来た。




 魔物肉というのは、帝都ではまず食べない。

 私の故郷のような辺境の田舎に行けば、そういう食文化もあるが、貴族の食卓には上がらないものだ。


 魔物肉ばかりを食べていたのなら、田舎生まれの平民だったということだろう。

 ……それに、林檎の木の枝や葉っぱを夢中で食べて、死にかけたなんて……よっぽどお腹が空いていたんだわ。




 …………。

 私も前世では、常にお腹を空かせていた。

 父親が物心つく前に、事故で死んだ。
 スナックで働く母親は、育児放棄気味だった。

 『食事は学校の給食だけ』みたいな日も結構あった。

 だから、空腹の辛さはよく分かる。


 ────でも、人の肉を食べてみようと、考えるほどでは無かった。


 こいつは、人を食べなかったと言っていたから、吸血衝動を抑えながら、魔物の肉を食べて、林檎を葉っぱや枝ごと食べていたようね。

 ……。

 ……どんな幼少期よ、それ。


 相手の事を知ろうとしたのに、ますます訳が分からなくなったわ。

 馬車がホールデン家の、お屋敷に到着した。


 これからミルフェラとの令嬢バトルが始まるが、コイツの奇想天外な過去を聞いて、憂鬱だった心が、また少し軽くなった気がする。
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