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お嬢様は謙虚堅実!?

第24話 少し先の、未来の話 B

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 ミルフェラは、俺の婚約者だ。

 あいつとの結婚は、親同士が決めた。

 ────俺はあまり乗り気ではなかったが、奴との婚約は帝国の政治を安定させるためだ。
 そういった消極的な理由からだが、婚約は受け入れている。


 そのミルフェラが、暗殺依頼……。

 しかも相手は────


「ミルフェラ嬢はヤコマーダ様のお気に入りを、殺そうとなさっていた訳ですな」

 レドモンドが、訳知り顔でそんなことを言う。

「……俺が彼女を、特別に想っていることを、────なぜ、知っている?」

「────フィリス嬢の誕生日パーティの件は、有名でございますから……」 

 ……。

 …………。

「……そうか」


 俺は別に、彼女とどうこうなりたいとは思っていない。
 ただ、親の決めた結婚までは、自由に生きたいと思っていただけだ。

 だがそれが、彼女を危険に晒す事になるとは……。

「────情報、感謝する。レドモンド伯爵。────それで、頼みがあるのだが…………」

 俺はレドモンド伯爵に、協力を依頼した。

「ええ勿論、協力させて頂きます。────ヤコマーダ様……」 

 レドモンド伯爵と共に、俺は計画の準備を進める。


 決行は、一か月後────
 王宮の大広間で開かれる、俺の誕生パーティーだ。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 私達が帝都に移住して、六か月が経過した。

 私はドレス姿で、鏡の前に立つ────

 
 本当に、綺麗だわ。
 生まれ変わった私は、世界一の美少女と言っても過言ではない容姿に成長した。

 前世の顔は、もう正確に思い出せない。
 鏡を見るのが嫌いで、あまり見なかったから……。

 前世で不細工だった私が、世界一の美少女に転生するだなんて……。


 ────私はふと、あの童話を思い出す。
 
 まるで、『醜いアヒルの子』みたいだわ。

 
 ……。

 あの話は、どんなだったかしら?

 …………。

 『みにくい』ことを理由に、イジメられ群れを追い出された主人公が、実は白鳥だった。────美しく成長した主人公は、白鳥の群れに迎え入れられて終る。


 確か、そんな物語だったはずだ。


 そう────

 分かっている物語の筋書きは、そこまでだ……。



 ……。

 では、この『私の物語』は……?

 これから、一体どうなるのかしら────? 



 良くない未来が、待ち構えている様な────

 私は突然、そんな不安に駆られた。

 きっとこれから、ホールデン家に行かなければならないからだろう。

 ────ちょっとネガティブになっていた。
 





 私はこれから、ホールデン家に赴く。
 ホールデン侯爵家にお呼ばれするのは、これで三度目だ。

 私の事を敵視する、ミルフェラ・ホールデン。

 彼女はやたらと、私に絡んでくる。
 今日は彼女の主催する昼食会────

 ミルフェラの誘いに応じたくはないが、相手は中央で力を持つホールデン家のご令嬢だ。
 ────誘われれば、行かない訳にはいかない。

 
 
 私は目隠しをしたルドルと共に、馬車に乗る。
 こいつのヘンテコな格好を見たら、憂鬱な気分が少し晴れた。

 どんな未来が待っていても、この男が側にいればきっと大丈夫────

 私はちょっと、気分が楽になった。


 ホールデン家に向かい、馬車が動き出す。

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