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お嬢様は謙虚堅実!?

第23話 目隠し B

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 馬車の中は、私とルドルの二人きりだ。
 御者は専属執事のジャックが務める。 

 ダンスパーティの会場は、第三王子の住む私邸だ。
 広大な領土を有する帝国の王子だけあって、デカい屋敷に住んでいる。

 

 私達は屋敷の入り口で馬車から降りて、邸宅の中に入る。

 会場は一階の、大広間になる。
 そこまで使用人に案内されて移動した。



 ライドロース家は、中央から敵視されている辺境伯だ。

 連れて歩ける護衛は一人までと、厳しく制限されている。

 
 しかも護衛は、刃物の所持を禁止されている。
 ルドルは白い棒を腰の後ろに差して、私の護衛に当たる。 


 私達が会場に入ると、ざわめきが起こる。

 ────そうよね。
 こいつの奇怪な格好を見れば、ザワつきもするわ。

 最初はそう思ったのだけれど、どうも違うらしい。




 注目されていたのは、私だった。

 私の周りに、男が群がってくる。
 会場にいた同世代の男たちが、次々に声をかけてきた。

 知り合いは────
「久しぶりですね。フィリス様」
 と言い、私との関係を周囲にアピールする。

 初めてあった人は、私の手を取り────
「初めまして、お名前を窺っても宜しいでしょうか?」

 と言って自己紹介をしながら、アプローチを開始する。


 どうやら、声をかける順番には暗黙の了解があるらしく、その場で一番地位の高い家の子供から話しかけてくる。


 ルドルは私から離れ、壁際に立っている。

 護衛の待機場所で、私を見守っている。
 他の家の護衛も、そこに集まるように立っている。

 周りの他の家の護衛達から、『────なんだ、こいつは?』みたいな目で、チラチラと見られている。

 あいつは注目されて、ちょっと得意げだ。

 
 いや……。

 奇異な目で見られているんだって…………。


 私は男の子たちのアプローチを笑顔で受け流しながら、あの目隠しをどうやって止めさせるか、頭を悩ませていた。


 そこに────





「道を開けろ!!」
 
 という大音声が、響き渡る。
 私の周囲の男の子たちが、退き、道が出来る。

 その先には、一人の男の子がいた。
 そいつはまっすぐに、私の元へと歩いてきた。

 そして、たどたどしく自己紹介をしてから、私の手を取り──
 真っ赤な顔で、私をダンスに誘う。


 男の子は帝国の第三王子、ヤコマーダ・ガルドルムだった。

 私はヤコマーダ王子と、二曲続けてダンスを踊る。 
 三曲目も、私と踊ろうとする王子の誘いを、やんわりと断る。



 王子から離れた私を、男の子たちが再び取り囲む。

 その後は二人と踊った後で、壁際へと移動する。


「────大変だったわね」

 声をかけてきたのは、『マーガレット・ネコルス』という名の令嬢だった。
 最近仲良くなった、南方の辺境伯の娘だ。


「ええ、踊っている時からずっと、私を見ている方がいて……。あの、眼鏡の……」

 正確には、第三王子が私に近づいた辺りから────
 殺意の籠った目で、私を睨み続けている少女がいた。


 彼女の情報を、マーガレットに求める。

「あの子は、『ミルフェラ・ホールデン』────ホールデン侯爵家のご令嬢で、ヤコマーダ王子の婚約者よ」

 ああ、なんだか──
 ややこしいことに、なりそうだわ。

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