42 / 96
お嬢様は謙虚堅実!?
第22話 動員兵力 A
しおりを挟む
帝都では、魔法の使用は厳禁である。
皆を集めて、注意喚起していた場で……
「────隠蔽魔法を併用すれば、証拠は残らんな」
ルドルが早速、抜け穴を示唆する。
この男は帝国の定めたルールなど、最初から守る気はない。
「────ガルドルム帝国は魔法技術の発展の遅れた野蛮国だと思っておりましたのに、そんな魔道具があるのですね。────意外ですわ!」
ラシェールが、ナチュラルに帝国を馬鹿にする。
彼女の父親は魔道具作りの天才だし、母親は魔法の天才だ。
サラブレッドのラシェールが、帝国を軽んじるのは仕方のないことではある。
────なにせ帝国は、魔法の研究にまったく力を入れていない。
国を統治したり、周辺国を侵略したりするのに使える便利な魔道具は持っている。
それも、かなり優秀な物を……。
だが、それらはすべて『聖女』を通じて、神ヤコムーンから下賜された物であり、自分たちが創り出したものはない────
神殿には人間が魔道具を開発することを、『神に対する冒涜』だと考える過激派もいるくらいだ。
魔道具は神から与えられるものであって、人間がそれを作ることは神の領域を犯すことになのだという……。
なんだか、頭のいい怠け者が考えたような理屈だが、ヤコムーン教の信者にはそれを当然のように思っている者が多い。
ライドロース家は帝国の中枢から目を付けられている辺境伯であり、どんな言いがかりを付けられるか分からない立ち位置にいる。
帝都では慎重に行動しなければならない。
……。
大丈夫かしら、この二人……?
私はルドルとラシェールを見て、不安に駆られた。
帝都に住むライドロースの親戚筋に挨拶回りをして顔見せを済ませると、いよいよ新生活のスタートとなる。
まずは、北方に領地に持っている家にお呼ばれしたり、屋敷に招いたりして親交を深める。
北方でも関係の悪い相手もいるが、大方は友好的だ。
昔からの知り合いも多いので、私は比較的、気楽に社交を楽しんだ。
子供がメインの社交は、昼食会や、午後のお茶会をする。
私も同年代の女の子を招いて、お茶会を催したりした。
招いたのは、北方地域の子供達だ。
このメンバーが、北方地域の派閥の集まりとなる。
私は生まれ持った美貌と、辺境伯の娘としての地位で、派閥をまとめ上げている。────お茶会に集まった皆が、私をリーダーとして立ててくれる。
やっぱり顔が良いと、色々と得よね。
ちょっと複雑だが、使えるものは何でも使おう。
さて、足元を固めたところで、他所に攻め込まなければならない。
なるべくこの帝都で、交友関係を多く持ちたい。
将来、誰が私の味方となり、敵となるのか……。
帝国との間で火種を抱える私は、味方を増やしておく必要がある。
『仲良し大作戦』開始。
まずは、相手を知ることから始めよう。
ライドロース家に、いくつもの招待状が届けられる。
私はジャックやセレナと相談して、どの誘いを優先するか決める。
招待状の中から、北西部の辺境伯『ニエルズ家』と『コルヴィット家』の誘いに応じることにした。後は南方の辺境伯『ネコルス家』にも行ってみる。
辺境伯ばかりだが、まずは同格との顔合わせからだ。
ライドロース家の動員兵力は、五千人────
無理をして一万人程度だ。
帝王とその直参の動員兵力は二百万で、辺境の外様を召集すれば、帝国兵は最大で三百万になる。
そして、神殿は独自に、帝国全土で二百万を動かすことが出来る……。
兵力差は歴然としている。
違い過ぎて勝負にもならない────
戦ったところで、勝ち目はゼロだ。
そこで、私の社交の目的は、少しでも味方を増やすことになる。
将来、帝国でライドロースを攻めようという話が出た時に、『攻撃には反対だ』と言ってくれる仲間を多く作りたい。
皆を集めて、注意喚起していた場で……
「────隠蔽魔法を併用すれば、証拠は残らんな」
ルドルが早速、抜け穴を示唆する。
この男は帝国の定めたルールなど、最初から守る気はない。
「────ガルドルム帝国は魔法技術の発展の遅れた野蛮国だと思っておりましたのに、そんな魔道具があるのですね。────意外ですわ!」
ラシェールが、ナチュラルに帝国を馬鹿にする。
彼女の父親は魔道具作りの天才だし、母親は魔法の天才だ。
サラブレッドのラシェールが、帝国を軽んじるのは仕方のないことではある。
────なにせ帝国は、魔法の研究にまったく力を入れていない。
国を統治したり、周辺国を侵略したりするのに使える便利な魔道具は持っている。
それも、かなり優秀な物を……。
だが、それらはすべて『聖女』を通じて、神ヤコムーンから下賜された物であり、自分たちが創り出したものはない────
神殿には人間が魔道具を開発することを、『神に対する冒涜』だと考える過激派もいるくらいだ。
魔道具は神から与えられるものであって、人間がそれを作ることは神の領域を犯すことになのだという……。
なんだか、頭のいい怠け者が考えたような理屈だが、ヤコムーン教の信者にはそれを当然のように思っている者が多い。
ライドロース家は帝国の中枢から目を付けられている辺境伯であり、どんな言いがかりを付けられるか分からない立ち位置にいる。
帝都では慎重に行動しなければならない。
……。
大丈夫かしら、この二人……?
私はルドルとラシェールを見て、不安に駆られた。
帝都に住むライドロースの親戚筋に挨拶回りをして顔見せを済ませると、いよいよ新生活のスタートとなる。
まずは、北方に領地に持っている家にお呼ばれしたり、屋敷に招いたりして親交を深める。
北方でも関係の悪い相手もいるが、大方は友好的だ。
昔からの知り合いも多いので、私は比較的、気楽に社交を楽しんだ。
子供がメインの社交は、昼食会や、午後のお茶会をする。
私も同年代の女の子を招いて、お茶会を催したりした。
招いたのは、北方地域の子供達だ。
このメンバーが、北方地域の派閥の集まりとなる。
私は生まれ持った美貌と、辺境伯の娘としての地位で、派閥をまとめ上げている。────お茶会に集まった皆が、私をリーダーとして立ててくれる。
やっぱり顔が良いと、色々と得よね。
ちょっと複雑だが、使えるものは何でも使おう。
さて、足元を固めたところで、他所に攻め込まなければならない。
なるべくこの帝都で、交友関係を多く持ちたい。
将来、誰が私の味方となり、敵となるのか……。
帝国との間で火種を抱える私は、味方を増やしておく必要がある。
『仲良し大作戦』開始。
まずは、相手を知ることから始めよう。
ライドロース家に、いくつもの招待状が届けられる。
私はジャックやセレナと相談して、どの誘いを優先するか決める。
招待状の中から、北西部の辺境伯『ニエルズ家』と『コルヴィット家』の誘いに応じることにした。後は南方の辺境伯『ネコルス家』にも行ってみる。
辺境伯ばかりだが、まずは同格との顔合わせからだ。
ライドロース家の動員兵力は、五千人────
無理をして一万人程度だ。
帝王とその直参の動員兵力は二百万で、辺境の外様を召集すれば、帝国兵は最大で三百万になる。
そして、神殿は独自に、帝国全土で二百万を動かすことが出来る……。
兵力差は歴然としている。
違い過ぎて勝負にもならない────
戦ったところで、勝ち目はゼロだ。
そこで、私の社交の目的は、少しでも味方を増やすことになる。
将来、帝国でライドロースを攻めようという話が出た時に、『攻撃には反対だ』と言ってくれる仲間を多く作りたい。
10
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。
永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。
17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。
その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。
その本こそ、『真魔術式総覧』。
かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。
伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、
自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。
彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。
魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。
【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
最強九尾は異世界を満喫する。
ラキレスト
ファンタジー
光間天音は気づいたら真っ白な空間にいた。そして目の前には軽そうだけど非常に見た目のいい男の人がいた。
その男はアズフェールという世界を作った神様だった。神様から是非僕の使徒になって地上の管理者をしてくれとスカウトされた。
だけど、スカウトされたその理由は……。
「貴方の魂は僕と相性が最高にいいからです!!」
……そんな相性とか占いかよ!!
結局なんだかんだ神の使徒になることを受け入れて、九尾として生きることになってしまった女性の話。
※別名義でカクヨム様にも投稿しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる