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お嬢様は謙虚堅実!?

第20話 お友達と魔法の杖と尻叩き B

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 今日の午後も、戦闘訓練だ。
 
 訓練中にセレナが、水を持ってきてくれた。
 休憩に入る。

 運動で火照った体を、ストレッチをしながら休ませる。


 ────その時である。

 ……はっ!!
 私は色仕掛けを思いつく。

 そして、唐突に、トチ狂ったことをしてしまった。

 私は身体を伸ばしながら、あの男に流し目を送る。

 そして……。






「ねえルドル様、身体を解すのを手伝って頂けないかしら? マッサージをお願いするわ。……うっかり、お尻をさわってもよくってよ♡」

 そんな風に、誘いをかけてみた。

 …………。


 そして、言ったそばから後悔した。

 何言ってんだ、私は……?

 ラシェールが『キャー、フィリス様! 大胆ですわ』とか言って盛り上がっているが、言った私は肝を冷やしている。


 あの男は訓練中に、何かと理由を付けて私の尻を叩く────

 きっとあいつは、尻が好きなんだろうと思っていた。
 普段から何となく、そう思っていた。


 だからつい、あんな軽口を言ってしまったのだ。


 言ってから、猛烈に後悔した。
 これじゃあ、痴女じゃないか。

 ちょっと攻め過ぎだっていう、自覚はある。
 内心ではかなり、恥ずかしいと思っている……。
 

 ……。

 でも一方で、このくらいは言ってもいいんじゃないかという思いは、少し芽生えてきている。

 私は美少女に生まれ変わった。

 そんな私の挑発に、あいつはどう反応するのだろう?


 きっと私はあいつが狼狽える姿を、見てみたかったのだろう。 

 だから、あんなことを……。

 …………。


 私はドキドキしながら、答えを待つ。







 あいつは、こっちに歩きてくる。

 私との距離を詰めて────


「────ふぎゅ!!」

 あの男はあろうことか、人差し指で、私の鼻を押し上げた。

 世界一可愛い美少女の、豚鼻である。



「……訓練中は、師匠と呼べ」

 それだけ言うと、定位置に戻っていった。

 …………。

 ……。






 ええっ~~、これだけ……?

 適当にあしらわれてしまったわ。
 私が残念がっていると、あいつと入れ替わりに、セレナが近寄って来る。


「お嬢様、マッサージでしたら私が……」

 そう言って、私の側に座る。



 そして──

「そうそう、うっかりお尻をさわっても良い、ということでしたわね」

 ……えっ?
 

 パシィィイイイイン!!!!!!
 
 私のお尻を、引っ叩いた。



「うぎゃっん!!!!」

 セレナの容赦ない尻叩き────


 かなり痛かった。
 十発尻を叩かれて、ようやく許して貰えた。


「お戯れが過ぎますよ、お嬢様……」

「お仕置き、ありがとうございます」


 私はセレナに、お礼を言った。

 お仕置きされた後は、こう言わなければいけない決まりだ。





 ……。

 …………。

 使用人はみんな、私に甘い。だが────

 私が悪いことをした時には、しっかりと躾ける。

 容赦なく、厳しく……。

 …………。


 でも、叱った後で、マッサージはしっかりやってくれた。

 ────この辺は、甘いのよね。
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