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お嬢様は謙虚堅実!?

第19話 色仕掛けをやってみた B

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「────お嬢様は筋が良いですね。すぐに強くなれますよ!!」

 ルドルに怒られてしょんぼりしていた私を、ドヤコちゃんが励ましてくれる。

 ────まあ! 
 なんて、いい子なのかしら。

 後でお菓子を上げましょう。


「────そうかしら? 自分ではよく分からないけれど、……えっと、師匠から見て、どうですか?」

 訓練を見てくれているあいつに、聞いてみた。

 さっき『俺の事は、師匠と呼べ』と言われているので、その通りに呼んでやる。



「……上達は早い。才能もある。────だが、自惚れるな。才能に頼らずに、何度も同じ動作を繰り返し、身体に覚え込ませろ。────気を抜けば、また、ケツを引っ叩くからな」

 師匠なだけあって、褒めるよりも小言が多い……。
 私は褒められて伸びるタイプなのだから、もっと褒めて欲しいのに……。


「根を詰めすぎるのも良くありません。そろそろ休憩にしましょう」

 筆頭メイドのセレナが、私の体調を気遣って、休憩を提案してくれた。
 ルドルも『そうだな』と同意し、休憩になった。


「────フィリスお嬢様、お水です……」

 ンガ―ちゃんが、水筒に入った水を手渡してくれる。
 お嬢様の休憩と言えばお茶なのだけれど、ティーカップ一杯のお茶じゃあ全然足りない。

 これだけ運動して汗をかいた後だと、水分を大量に摂取したい。

 優雅にお淑やかになんて、飲んでいられないのよ。
 



「ありがとう、ンガ―ちゃん」

「……んがー」


 私は受け取った水筒の水を、一気に飲み干す。

 お嬢様としては『はしたない』行為だけれど、トレーニング中はセレナもうるさく言わない────

 水分補給は大事なのだ。


 
 格好も動きやすいように薄着だし、髪もポニーテールで雑にまとめている。
 ────そして、汗だくだ。

 前世の私の乏しい『異性に関する知識』によれば、殿方は女性のこういう格好が好きらしい────


 …………。

 ……。

「……ねえ、ルドル様……私って、綺麗────?」

 小首をかしげながら、聞いてみた。

「まあ! 大胆なアプローチですわ!!」

 ラシェールが目を輝かせながら、興奮している。
 恋バナとか好きなんだろう。


 ……。

 …………。

 私はこの男と『手を組もう』と思っている。
 世界一可愛いと評判のこの美貌で、惹き付けておく必要があるのだ。

 これは、恋とかではない。

 言うなれば、戦略的色仕掛け……。
 高度な外交戦術である。


 私の問いに、ルドルは────

「ああ、綺麗だと思うぞ」

 ストレートに褒めてくれた。


 う~ん。
 ……ちょっと物足りない。

 もっと、慌てふためく姿を見たかったのに……。





 私がちょっと残念っがっていると、向こうで専属執事のジャックが、ルドルを嗜めていた。

「ルドル殿、……そのような野獣の如き眼光で、お嬢様を見つめるのは御控え下さい」
 
 ────別に私は構わないし、ルドルの目も普通なのだけれど……。

 普段は穏やかな好々爺なのだが、私の事となると怒りっぽくなるのよね。



 ジャックはルドルから、剣を習っている。
 だから、あいつの強さを熟知しているし、到底敵わない相手である事も解っている。

 だが、剣の師匠のルドルに対しても、筆頭執事は物怖じしない。


 お爺様から私を任されているジャックは、責任感が強いのだ。


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