33 / 139
お嬢様は謙虚堅実!?
第17話 覚醒 B
しおりを挟むラシェールはこちらを見て、得意げに胸を張る。
「わたくしの、勝ちですわね!!」
勝利宣言された。
……は?
……納得いかない。
私は確かに、こんにゃくを作れない。
だが、氷の塊を千以上、創ることは可能だ。
彼女に実力が劣っているとは思えない。
それにラシェールは杖を装備しているじゃないか、私は丸腰だ。
公平な競争ではない。
……。
……私はよく考えもせずに、思い付きでこんにゃくを作ろうとして、失敗して負けた。
そんな間抜けな負け方が嫌で、心の中で言い訳を並べ立てる。
……。
どうやら────
私は意外と、負けず嫌いだったようだ。
前世で諦め癖が付いていたのも、『勝負して負ける』のが嫌だったからかもしれない。レースに参加しなければ、負けることもない。
前世では、それでも良かった。
レースに参加せずに逃げても、自尊心は傷つかない。
だが、フィリス・ライドロースとして生まれたからには、レースに参加しない=敗北である。そして、勝負して負けることが、こんなに悔しいとは思わなかった。
その悔しさが、私の心を激しく燃え上がらせ、そして、凍てつかせる。
────プツンッ!!
私は冷静に、ブチ切れた。
「……まだ、勝負はついていませんわ」
私はリミッターを外す。
これまでは、強力な魔法を使うと体を壊すという教えもあり、どこか手加減しながら魔法を使っていた。
その制約を解いて、私は全力で魔法を解き放つ────
キィィイイイイインンンンンン!!!!!!!!!
ルドル・ガリュードの立っていた場所を中心に、巨大な氷の塔が建っている。
私が赤ん坊の時に、天使を氷漬けにした魔法だ。
あの時よりも、さらに氷結範囲は広い。
異空間の草原に、巨大な氷河が出来上がる。
気温が急激に低下したことで、辺りに霧が発生して視界を遮る。
……。
……あっ!
勢いでやってしまったが、あの男はあの中よね……。
しまった!
あいつを、氷漬けにしてしまった。
いくらあの男でも、これでは死んでしまうわ。
「……あっ、────ああっ」
私は焦る。
焦燥感からか、目から涙が溢れ出る。
「心配するな。俺はこの程度では死なん」
私の背後から、声がした。
あの男の声だ。
どうやら、ルドルは魔法攻撃を避けて、私の後ろに回り込んでいたらしい。
私は気が抜けて、倒れ込みそうになる。
そんな私を、あいつは支えてくれた。
そのまま、あいつの腕に抱えられる。
『お姫様抱っこ』というヤツだ。
私は恥ずかしくなって、『降ろして下さい』と言おうとしたが、口が上手く動かない。
魔力を大量に使い、疲れたようだ。
眠くなってきた。
辺りの景色が一変する。
私達は、お城の中庭に戻ってきていた。
「凄いですわ! 流石は、フィリス様ですわ!!」
私の魔法を見て、ラシェールが無邪気に喜んでいる。
彼女の称賛を聞きながら────
私はゆっくりと、眠りに落ちていった。
10
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる