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お嬢様は謙虚堅実!?

第17話 覚醒 B

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 ラシェールはこちらを見て、得意げに胸を張る。

「わたくしの、勝ちですわね!!」

 勝利宣言された。



 ……は?
 
 ……納得いかない。

 私は確かに、こんにゃくを作れない。
 
 だが、氷の塊を千以上、創ることは可能だ。
 彼女に実力が劣っているとは思えない。
 

 それにラシェールは杖を装備しているじゃないか、私は丸腰だ。

 公平な競争ではない。


 ……。

 ……私はよく考えもせずに、思い付きでこんにゃくを作ろうとして、失敗して負けた。

 そんな間抜けな負け方が嫌で、心の中で言い訳を並べ立てる。 


 
 ……。

 どうやら────
 私は意外と、負けず嫌いだったようだ。

 
 前世で諦め癖が付いていたのも、『勝負して負ける』のが嫌だったからかもしれない。レースに参加しなければ、負けることもない。


 前世では、それでも良かった。

 レースに参加せずに逃げても、自尊心は傷つかない。



 だが、フィリス・ライドロースとして生まれたからには、レースに参加しない=敗北である。そして、勝負して負けることが、こんなに悔しいとは思わなかった。


 その悔しさが、私の心を激しく燃え上がらせ、そして、凍てつかせる。

 ────プツンッ!! 
 私は冷静に、ブチ切れた。

「……まだ、勝負はついていませんわ」




 私はリミッターを外す。

 これまでは、強力な魔法を使うと体を壊すという教えもあり、どこか手加減しながら魔法を使っていた。

 その制約を解いて、私は全力で魔法を解き放つ────

 


 キィィイイイイインンンンンン!!!!!!!!!


 ルドル・ガリュードの立っていた場所を中心に、巨大な氷の塔が建っている。


 私が赤ん坊の時に、天使を氷漬けにした魔法だ。

 あの時よりも、さらに氷結範囲は広い。

 異空間の草原に、巨大な氷河が出来上がる。
 気温が急激に低下したことで、辺りに霧が発生して視界を遮る。
 


 ……。

 ……あっ!

 勢いでやってしまったが、あの男はあの中よね……。

 しまった!
 あいつを、氷漬けにしてしまった。




 いくらあの男でも、これでは死んでしまうわ。

「……あっ、────ああっ」

 私は焦る。
 焦燥感からか、目から涙が溢れ出る。




「心配するな。俺はこの程度では死なん」

 私の背後から、声がした。

 あの男の声だ。



 どうやら、ルドルは魔法攻撃を避けて、私の後ろに回り込んでいたらしい。

 私は気が抜けて、倒れ込みそうになる。

 そんな私を、あいつは支えてくれた。

 
 そのまま、あいつの腕に抱えられる。
 
 『お姫様抱っこ』というヤツだ。

 私は恥ずかしくなって、『降ろして下さい』と言おうとしたが、口が上手く動かない。



 魔力を大量に使い、疲れたようだ。
 眠くなってきた。 

 辺りの景色が一変する。
 私達は、お城の中庭に戻ってきていた。


「凄いですわ! 流石は、フィリス様ですわ!!」 

 私の魔法を見て、ラシェールが無邪気に喜んでいる。

 彼女の称賛を聞きながら────
 私はゆっくりと、眠りに落ちていった。


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