13 / 96
お嬢様は謙虚堅実!?
第7話 神託 B
しおりを挟む私は二歳くらいから、2,3の単語を用いて話し始めていた。
親の機嫌を取るのは、それで十分だった。
簡単なことだわ。
沢山の言葉や、難しい文章はいらない。
「お父様、大好き!!」
「お母様、綺麗!!」
────これで十分。
両親は大喜びだ。
その頃の私は、何度も鏡で自分の姿を確認していた。
自分で言うのもなんだが、私の容姿はかなり可愛いい────
両親も、セレナも、他の使用人たちも、こぞって私の事を『世界一可愛い』と言ってくれた。
身内贔屓だとしても単純に嬉しかったが、同時に不安でもあった。
可愛くなければ──
私はまた前世のように、誰からも愛されない存在になるのではないかと……。
だから、不安に駆られて、鏡を見るのが習慣になってしまった。
──── ──
──────── ──── ──
──────── ──── ──── ──
──────────────── ──── ──── ────────
私はフィリス・ライドロース────
三歳になった。
このくらいになればもう、普通に喋っても良いだろう。
両親とも、コミュニケーションを取り始める。
「お父様────あの、我が家の財政は、大丈夫でしょうか────?」
そんな『こまっしゃくれた』ことを、言ったりする子供になった。
前世では、お金に困った貧乏暮らしをしていた。
その時のことを思い出し、不安になって、ライドロース家の財務状況を確かめたり、節約を進めたりした。
頻繁に鏡を見ていた習慣は、三歳になった頃には鳴りを潜めている。
人は慣れる生き物である。
両親だけではなく、使用人も、領主であるお爺様も、帝都から帰ってきたお兄様も、お兄様の婚約者になった隣の領地のご令嬢も────
皆が私の事を可愛いと言って、可愛がってくれる。
私の事を、好きでいてくれる。
それが実感できて、安心して生活できるようになった。
…………。
……。
────いつか、『世の中、そんなに甘くない』という状況に陥ってしまうかもしれない。
だが、今は──
甘えることの許される幼子の今だけは、存分に周囲に甘えておこうと思う。
私は家族に甘え、甘やかされて育った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
聖ガルドルム帝国・帝都ガルドールムの大神殿で、神に祈りを捧げていた教皇、
ニヤコルム・ヤコームル十五世に神の神託が下った。
『フィリス・ライドロースを始末せよ』
「おお!! 神が語り掛けて下さるとは……」
ニヤコルムは、感動で打ち震える。
彼は暫く、そのまま見悶えていた。
その後で、神から与えられた使命を遂行する為の思案に入る。
「『ライドロース』といえば……あの辺境伯か、やはり、神の敵であったか……それにしても、はて……?」
辺境伯は潜在的に、神の敵である。
神殿では代々、そう目されてきた。
『始末するように』との神託が下ったとしても、不思議はない。
ニヤコルムが訝しんでいるのは、『フィリス』という『個人』を、神が特別に指定したことだ。
「────余程の、罰当たりに違いない」
ニヤコルムは直ちに、北方を統括する神殿に、『フィリス・ライドロース』を始末するようにとの書簡を出した。
10
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。
永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。
17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。
その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。
その本こそ、『真魔術式総覧』。
かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。
伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、
自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。
彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。
魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。
【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない
しめさば
ファンタジー
急遽異世界へと転生することになった九条颯馬(30)
小さな村に厄介になるも、生活の為に冒険者に。
ギルドに騙され、与えられたのは最低ランクのカッパープレート。
それに挫けることなく日々の雑務をこなしながらも、不慣れな異世界生活を送っていた。
そんな九条を優しく癒してくれるのは、ギルドの担当職員であるミア(10)と、森で助けた狐のカガリ(モフモフ)。
とは言えそんな日常も長くは続かず、ある日を境に九条は人生の転機を迎えることとなる。
ダンジョンで手に入れた魔法書。村を襲う盗賊団に、新たなる出会い。そして見直された九条の評価。
冒険者ギルドの最高ランクであるプラチナを手にし、目標であるスローライフに一歩前進したかのようにも見えたのだが、現実はそう甘くない。
今度はそれを利用しようと擦り寄って来る者達の手により、日常は非日常へと変化していく……。
「俺は田舎でモフモフに囲まれ、ミアと一緒にのんびり暮らしていたいんだ!!」
降りかかる火の粉は魔獣達と死霊術でズバッと解決!
面倒臭がりの生臭坊主は死霊術師として成り上がり、残念ながらスローライフは送れない。
これは、いずれ魔王と呼ばれる男と、勇者の少女の物語である。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる