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お嬢様は謙虚堅実!?

第5話 最強 B

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 男は、敵の到着を待たなかった。

 その刀に風の魔法を纏わせて、振るった。

 ────ヒュゴッ!!!!!
 

 刀から、風の刃が解き放たれる。




 高速で空間を切り裂いて進んだ風の刃は、化け物の胸を抉り、敵の動力源である魔導コアを切断する。

 コアを破壊された化け物は、力を失い地に落ちて、やがて消滅した。


 ────敵の数は数百はいる。

 そいつらが空を飛び、物凄いスピードで迫ってくる。



 しかし、男が繰り出す風の刃は──
 奴らがここに到達する前に、その全てを切り伏せていた。



 ……強い。

 本当に、何者なのよ。
 この男────


 年の頃は、三十前後かしら?

 黒い髪、精悍な顔つきで、刀と強力な魔法を操り、人間を遥かに凌駕していた化け物を、あっさりと全滅させた…………。



 
 人間を遥かに凌駕した化け物を、倒すことが出来る。

 だとすれば──
 その者は人間という枠を、遥かに超越した存在といえる。




 吸血鬼────

 私は瞬間的に、そう連想した。
 この人はきっと、吸血鬼だ。


 もう一度、髪を確認する。

 黒かった。
 特徴は一致する。


 日中は力が出せないという話だったが、今日は曇天で、太陽は雲に隠れている。

 実力を発揮できないというほどの、環境では無いのだろう。


 
 人の生き血を、飲むのかどうかは分からない。

 助けたお礼にと言って、要求されたらどうしましょう?

 ────困るわ。


 両親に負担させるわけにはいかない……。
 だって、あの化け物共の狙いは、私だったんだもの。
 
 ────その時は、私の血を提供することにしましょう。





 ……。

 …………。

 
 それにしても、吸血鬼というのは、言い伝えほど怖くはない。
 
 それどころか──
 あの男の顔を見ていると、何故だか凄く安心する。


 安心した私は、猛烈な睡魔に襲われる。


 馬車の振動で目を覚ましたところで襲撃に遭い、化け物に命を狙われる中で緊張感が続いた。
 その上、大規模な魔法を使って、疲れきっている。


 私は、まだ赤ん坊だ。
 睡魔には勝てない。


 瞼が下がる。

 もう意識を保てない……。 
 だから、寝ることにした。




 寝る子は育つ────

 前世の『ことわざ』だ。

 単なる迷信ではなく、子供の成長には睡眠が不可欠なのだ。
 私は早く成長したい。

 謎だらけの状況で、知りたいことは沢山あったが、眠気には勝てなかった。
 
 


 …………。

 ……。


 次に目覚めた私は、お城の部屋にいた。

 辺境伯のお爺様のお城だ。


 田舎の領主らしい頑丈な造りで、部屋も広い。

 歴史を感じさせる調度品が多く、それなりに豪華な部屋だった。


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