2 / 72
お嬢様は謙虚堅実!?
第2話 私は異世界に転生した A
しおりを挟む私は、目を覚ました。
「……うっ」
────眩しい。
世界は光で溢れている。
私に見える世界は、ぼんやりとしている。
時折、視界に人が映るが、輪郭がはっきりしない。
誰かに持ち上げられて、抱っこされる時もあった。
何か言葉をかけられているが、何を言っているのか判別できない。
身体を自由に動かすことも、喋ることも出来ない────
でも、危機感は感じない。
赤ん坊とは、そういうものだ。
焦って何かをする必要などない。
私は転生した。
前世の記憶も、自分が転生者だと言う事も覚えている。
────だが今は、まどろみの中にいる。
目を覚ましている時でも、世界はぼんやりとしていて、焦点が合うことは無い。
……。
…………。
私は何も考えずに、睡眠と覚醒を繰り返す日々を送る。
──── ──
──────── ──── ──
──────── ──── ──── ──
──────────────── ──── ──── ────────
────生後、三か月。
私はすでに、ハイハイが出来る。
言葉も理解できるし、喋ることも可能だ。
三か月でこの成長は、かなり速いほうだろう。
転生の女神様が、ちょっとだけ特別扱いをしてくれると言っていた。
これがそうなのだろう。
生まれ変わった私の頭脳は明晰で、運動能力も優れていた。
私には、『前世』という比較対象があるから断言できる。
生まれ変わった私は、とても『才能』に溢れている。
能力の高い人間だ。
そして、────
なにより私が、嬉しかったのが……。
「フィリス、おはよう。────今日も可愛いわ!」
柔らかな雰囲気の美人が、私を見つめて朝の挨拶をする。
私の母親、『ケイティ・ライドロース』だ。
「私にも見せておくれ、ああ、本当に可愛いな。────まるで花の妖精のようだ」
母親と入れ替わるように、キリッとしたイケメンが私の視界に入る。
私の父親、『ジェフリー・ライドロース』。
私の両親は、美男美女のカップルだった。
────それが何より、嬉しかった。
この二人の子供ならば、私はきっと美人に成長するだろう。
父親も母親も、すでに私の事を可愛いと褒めてくれているが、赤ん坊の段階だと親は皆、そう言うと思う。
────前世の私のような例外もあるかもしれないが、親は子供を可愛いと言うものなのだ。
だが、両親が美男美女であれば、高確率で私も美人になれる。
美人に生まれたことを、私は喜んだ。
転生の女神に出会い、私はようやく人と平等になれた。
女神への感謝は変わらない。
だが、生まれ変わった私は、この世界で、人の社会の中で生きていかなければならない────
人と係わり生きていくのであれば、容姿は重要だ。
第一印象が大事なのは、どこの世界でも同じだろう。
美人であれば幸せになれるとは限らないが、少なくとも、美人であれば最初から人に見下されるようなことは無い、と思う。
私の事を抱き上げて、語り掛けてくる両親に向かって────
『あー』とか『うー』とか言って、答える。
その度に、二人とも喜んでくれた。
私がすでに言葉を理解し、喋ることが出来るのは内緒にしている。
────成長が早すぎると、不気味に思われるかもしれない。
そんな心配をして、私は年相応の赤子の振りをする。
両親の溺愛ぶりを見るに、心配のし過ぎのようにも思う。
だが、前世が前世だけに、ここは慎重に行きたい。
母親に抱かれて暫くすると、私は眠くなり、瞼を閉じる。
頭脳は明晰でも、身体は赤ん坊だ。
すぐに眠くなる。
母親はゆっくりと、私をベットに寝かせてくれた。
────焦る必要はない。
年相応でいて良いのだ。
私はウトウトし、眠りに落ちた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる