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レイゼイの町

第69話 門番の荷物検査 A

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 僕と心愛さんは、ゲーム世界にログインした。
 そして旅の支度をしてから、テントを出る。

 ────このまま道を順調に進めば、半日で目的地まで着くだろう。


 二つの道が、合流している地点を通過した。
 ここから、東に進めばレイゼイの町で、西に向かえばブイロ村がある。


 僕たちは東に進んで、『レイゼイの町』を目指して歩いた。



 ダンジョンのクリア報酬の地図によると、レイゼイの町は海に面する港町のようだ。

 町の南側が、陸地に入り込んだ海になっている。

 
 ────魚料理が、食べられるかもしれない。

 お金に余裕もあることだし、町に着いてから、食べてみるのも良いかもしれない。

 ……このゲーム世界の料理は、とても美味しかった。

 『レイゼイの町』のごはんも、きっと美味しいだろう。
 旅先で、その土地の料理を味わう……、この過酷なゲーム世界で、旅行のような楽しみが出来るとは思わなかった。
 
 ────これも、心愛さんのおかげだ。

 僕一人だと、食事は取らなかっただろうからなぁ……。



 
 そんなことを考えながら、道を進むと、大きな壁に囲まれた町が見えてきた。

 ようやく僕は、怜悧のいる町まで、辿り着くことが出来た。




 道の先に城門がある。

 城門の前には、人だかりが出来ていた。

 複数の馬車と、その周囲で待機する人の群れ……。


 
 町の中に入るために、順番待ちをしているようだ。

 僕達も列に並んで、順番を待つことにした。


 
 待機している人たちは、きっと『行商人』なのだろう。

 ────そんな風貌をしている。
 


 僕たちのように町に入ろうとしている者もいれば、逆に町の中から外へと、出発する人もいる。

 
 行商人たちは剣や槍を持ち、武装しているが、あまり強そうには見えない。

 冒険者を護衛として雇っている商隊もあるが、お金をケチっているのか、護衛の姿が見当たらない商隊もある。

 彼らは魔物に遭遇した場合、どうする気なのだろう……?
 まあ、逃げるしかないよな。


 ────ああ、そうか!
 意外と、護衛は必要ないのかもしれない。


 全力で馬車を走らせれば、逃げるのは意外と簡単だ。
 
 魔物に遭遇しても、相手が弱ければ、人の足でも逃げ切れる。 



 ダンジョンに近づかなければ、強い魔物は現れないのだから、商人は魔物に遭遇しても、逃げればいいんだ。

 ────護衛はいらない。


 だったら、護衛を雇っている人たちは……?

 どうして雇うんだろう??

 謎が一つ解けたと思ったら、新しい謎が生まれた。





 町から出て行商に向かう人たちが、僕達の側を通る。

「盗賊が出ないと良いけどな……」

「奴らは今、北の方で暴れているらしい……西の方には、いないはずだ」


 そんな会話が、聞こえてきた。

 ああ、そうか……、冒険者の護衛は、盗賊対策だったようだ。


 僕はその答えに、妙に納得してしまった。

 場合によっては、モンスターよりも、人間の方が怖い時もあるのだ。


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