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ゴブリンの巣穴

第60話 僕達は、挑戦することにした。 A

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 僕はゲーム世界のテントの中で、目を覚ました。


 隣を確認する為、目を向ける……。

 ────あれ?


 一緒に寝ていたはずの、心愛さんの姿がない。

 そして外の椅子に、人が座っている気配がある。


 ────どうやら今日は、僕の方が遅れて、やってきたらしい。




 テントから外に出る前に、ステータスのチェックをしておく。



 ……。

 …………。


 冒険者と魔法使いのレベルが、それぞれ1ずつ上がっていた。

 このダンジョンに入って、かなりの数の魔物と戦ったからな……。


 ……ん?

 そして、レベル以外の変化を発見する。

「……これは?」

 特技に『オートマッピング』という能力が増えていた。



「えっと、オートマッピング」


 使ってみると、地図が現れた。
 
 ステータス画面とは別に、半透明のウィンドウが表示されている。

 そこには、この迷宮のマップが表示されている。


 ……。

「……、遅いよ」

 僕は力なく、そう呟いた。







「おはよー、ジローちゃん……どったの? 元気ないね」

「おはようございます。ココアさん、実は────」

 僕は心愛さんに、新しく覚えた特技を説明する。


「へぇ~、良かったじゃん! ジローちゃんがいれば、────次からは、地図描かなくて、良いってことでしょ?」

「……そうですね。……ああ、そうか、言われてみると、すごく良い特技ですね。────これ」


 特技『オートマッピング』は、自分の歩いた場所を、自動で地図にしてくれる。

 使用するには、MPが1必要になる。

 そして一度使えば、消すまで地図が表示され続ける。



 地図は『ゴブリンの巣穴』だけではなく、『スライムの森』や『コボルトの谷』も選択できるし、ダンジョンだけではなく、フィールドマップの表示も可能だ。

 表示されるのは、自分の行った事のある場所だけなので、ダンジョンの全体像は分からないが、迷宮の入り口の場所は、これで知ることが出来た。


 地図をフィールドマップに切り替えると、まだまだ空白の方が多いが、これから冒険を進めれば、どんどん埋まっていくことになるだろう。


 ここまで苦労して作った『ゴブリンの巣穴』地図が、無駄になってしまったと思い落ち込んでいたが、先々の事を考えると、『オートマッピング』はとても便利な特技だ。

 何しろ、地図を作成する手間を省ける。

 ────これは、ものすごく大きい。



  
 子の特技を知った時、地図を作製した労力が無駄になったと思い、僕はまず落ち込んだ。

 しかし、心愛さんは素直に喜んだ。

 ────二人の性格の違いが、如実に出ている。
 





「ジローちゃん、ちょっと地図見して────?」

 心愛さんは、オートマッピングの地図と、最初に作った地図を見比べ出した。



「あー、ここで、間違ったのか……、こっちじゃなくて、こう────」 

 オートマッピングの地図と、最初に作成した地図を見比べることで、どこで描き間違ったのかが分かる。


 心愛さんは意外と、研究熱心なタイプの様だ。

 彼女はひとしきり地図を比較してから、僕に問いかける。


「んー、で、これから────どうしよっか?」

 そう、迷宮の入り口の位置が、判明したことで──
 僕達には、二つの選択肢ができた。


 これから、『村に戻る』か……。

 それとも『ボスに挑む』かだ。


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