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コボルトの谷

第43話 次の村へ──── A

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 僕がぶん殴ったヨシエちゃんが、気を失って地面に転がっている。

 騒がしかったおばさんが沈黙したことで、広場は静寂に包まれた。


 おばさんをぶん殴った後なので、僕はこの場所にちょっと居辛くなる。



 
 まあ、いい────
 これでフードの少女と、ちゃんと話が出来る。


 えっと、どこまで話したっけ……?

「……あの、それで、えっと、────何から話せば……、あっ、そうだ。────勘違いをされている様なので、訂正させて下さい!!」


「ヒッ……」

 僕が改めて話しかけると、少女は大げさにビクついた。



 怖がられている────?

 あのおばさんは、この少女を助けようとしていたようだし、仲が良かったのかもしれない……。

 ヨシエちゃんを殴ってしまったのは、失敗だったかもしれない。

 この少女を仲間に誘うのは、厳しくなったようだ。

 諦めよう。



 ────だが、それでも、誤解だけは解いておきたい。

 僕は少女に説明を続ける。


「えっと、僕は殺人犯ではありません。────ワールドニュースに載っていた写真の三人とは、顔が全く違います。────後で、ちゃんと確認しておいて下さい」


「……は? 写真────??」

 少女は何のことか分からない、という感じでいる。 


 ああ、ひょっとして……。

 この少女は、見出ししか読んでないのかな? 
 

「えっと、その……殺人事件の記事を、ちゃんと読んでいますか? ────ニュース記事のタイトルをタップすると、詳しい内容が書かれた画面が表示されます。そこに、殺人犯の顔写真が載っているんです。……三人とも、二十歳以上の成人男性です」

 僕の顔とは、似ても似つかない。
 

「……っ!! べ、別に、そんなの、私の勝手だろッ! ニュース記事なんて、読みたくないし、字がいっぱいで読みにくいし、見出し読めば、大体、何があったか、わかるし……」


 どうやらこの少女は、ニュース記事のページを開いてすら、いなかったようだ。
 
 でもまあ、誰にだってミスはある。

 ────責めないでおこう。


「そうですね。差し出がましい事を言いました。────ごめんなさい。……ただ、写真だけでも、確認しておいた方が良いかもしれませんよ?」

 おお、なんかスマートな感じにフォローできた。

 さっきのは、カッコ良かったと思う。



「……よ、余計なお世話だっ! し、死ね、死ねっ!!」

 フォローした僕に向かって、彼女は死を命じる。

 ────格好良くは無かった様だ。



 だが、この少女も殺人事件の情報には、関心を持っている。

 この場では憎まれ口を叩いていても、後でちゃんと写真を確認するはずだ。



「ああ、それと────僕はあなたを仲間に誘おうと声をかけたのですが、……どうやら無理そうなので諦めます。────襲われたとはいえ、あのおばさんを殴ってしまい、申し訳ありませんでした」


「……は? えっ? ────仲間ッ! えっ? なんで、わた、私なんか……べ、別に……ん? おばさん────? 何で謝るんだ、お前?」

 少女が不思議そうに、問いかけてきた。


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