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コボルトの谷

第37話 VSコボルトキング A

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 ×印を付けた地点から、コボルトの谷を一周した。

 壁面を確認すると、×印が五つある。


 僕の推測が正しければ……。
 これで、この谷を50キロメートル探索したことになる。

 もう、×印を付ける必要はない。


 これで、このダンジョンのボスが登場するはずだ。
 

 印をつけた地点から少し進む。


 すると────
 進行方向の先から、プレッシャーが発生……。


 視界の先に、巨大なモンスターが出現した。

 二メートルを優に超えた、大きなコボルトがいる。










 筋骨隆々な獣人型の肉体に、コボルト特有の凶暴で剥き出しの牙──
 加えて左右の腕に、大きな鉤爪も装備している。


 その敵を見た瞬間、僕の全身に緊張が走る。

 敵の放つプレッシャーに負けて、恐怖が身体を支配する。


 コボルトの谷のボス、コボルト・キングだ。

 その左右には────
 ボスより一回り小さなコボルトが二匹、お供のように控えている。

 ……凶悪な見た目のボスの横にいると、進化タイプが可愛く見えるな。






 僕の推測通りだった。

 この谷をループして、一周すれば10キロメートルになるようだ。

 50キロメートル歩いたことで、ボスが現れた。



 僕の心は、恐怖で強張ったままだ。


 それでも身体は自然に動き、戦う準備を開始する。

 右手で短剣を抜き、左手で散弾を作った。


 敵もこちらを捉えて、動き出している。

 ────戦闘開始だ。


 




 コボルトの群れは、僕を見つけると同時に行動を開始した。

 ボスのお供二匹が先陣を切り、その後ろにボスが走る。


 ────まずは、雑魚から始末しよう。

 僕は左腕を敵に向かって、まっすぐに伸ばす。
 そして、ダークショットを放った。


 ────ドウッ!!!

 ボスの前を走る二匹を、散弾が捉えて行動不能にする。


 即死させることは出来なかった。

 だが、十分なダメージを与えている。

 もう戦闘は出来ないだろう。






 ────ヒュゴッ!!!!

 僕がダークショットを放った、二秒後……。

 コボルト・キングの攻撃が、僕の真横から迫る。


 ────速い!!

 これがボスの、トップスピードか……。
  

 僕がダークショットを放った瞬間、ボスは進路とスピードを切り替えた。
 二匹の部下を迂回し、僕に接近────

 こちらの攻撃直後の隙を狙って、右側から飛び込んできた。


 ────移動速度が速すぎる。



 
 まともにやり合っても、対応できない相手だ。


 僕は特技『スロウ』を使用────

 停滞する時の中で、敵の攻撃を見切る。


 コボルト・キングは、左手を振り上げるように──
 装備した鉤爪で、僕の顔を狙っている。


 ……斜め下からの攻撃か、盾で防いでから反撃しよう。


 僕はダークショットの散弾を、三発作る。

 ────そして、スロウを解除した。







 敵の攻撃の軌道は、すでに見切っている。

 装備した戦士の盾を、敵の攻撃の軌道上に移動させる。


 ガギィィイイ!!!!

 敵の攻撃を、間一髪で防げた。


 ────けれど、重いっ!!

 敵の体重と膂力は、僕よりもはるかに大きい。


 こんなのと、まともにぶつかり合えば────

 ヒュォオオ!!!!

 僕の身体は吹き飛ばされて、地面を転がる。


「────グッ!!」




 転がり終えた僕の腹部に、コボルト・キングの蹴りが入った。

 ドゴッォオン!!!


「ガハッ────!!」

 鎧を着ているとはいえ、身体を凄い衝撃が突き抜ける。


 打撃ダメージを、かなり食らった。

 敵の蹴りでさらに地面を転がされた僕は、仰向けで地面に倒れている。

 かなりのダメージが入った。

「はぁはぁ……」
 


 コボルト・キングは慎重に僕に近づき、こちらの様子を見ながら右腕を振りかぶる。

「……くっ」

 僕は、動けないでいる。
 

 敵はこちらの動きを観察し、カウンターを狙っていた。



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