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コボルトの谷

第35話 時間の経過 B

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 日が落ちてから、随分と時間が経過したように思う。
 視界に問題がないとはいえ、暗闇の中で探索し、戦闘しているのだ。

 疲れやすくなっている気がする。
 

 そろそろテントを使用して、ログアウトしたい……。

 だが、ボスとの戦闘を考えると、今日の内に、なるべく長く歩いておいた方が良い。

 せめて、あと一周────。

 僕はもう少し、粘ることにした。






 モンスターとの戦闘は、問題ない。

 この谷のコボルトは岩陰に隠れていて、こちらの隙を窺って襲ってくる。

 だけど、敵の潜んでいそうな岩陰は、だんだん分かるようになってきたので、気を付けて歩けば奇襲を受けることは無い。


 モンスターの出現頻度も高くないし、こちらから歩き回らなければ出会うこともないので、休憩中に襲われることもない。
 
 敵は複数で出現することが多いが、散弾で敵の群れを無力化できる。


 アイテム『魅惑の匂い』を用い、モンスタースタンピードを経験した僕には、少し物足りないくらいの難易度だ。

 HPもMPも、まだ少し余力はある。

 僕はこのまま、探索を続けることにした。





 歩きながら、僕はこの世界の時間について考える。

 このままログアウトせずに────
 ゲーム世界に居続けたら、どうなるのだろうか?

 この世界の時間は、現実世界の時間とリンクしているのだろうか?

 
 その辺りは正直まだ解らないが、僕なりにいくつか仮説は立ててある。

 まず────
 僕がログアウトしている間も、この世界の時間は経過し続けている。

 僕が二日間、この世界にログインしなければ、その二日間はゲーム世界に僕は存在しないことになる。

 NPCから見ると、そうなるだろう。

 しかし、僕とパーティを組んでいたスズヨウさんは、二日間、僕がゲームにログインしなくても、それにまったく気づいていなかった。

 おそらく、プレイヤーに雇われてパーティを組んだNPCは、その期間、プレイヤーの時間とリンクすることになる。

 僕がこの世界にいなかった二日間は、スズヨウさんも同じように二日間の時間をスキップしていたのではないだろうか。
 
 そんなことを考えながら、僕は暗闇の谷底を歩く。

 出現したモンスターを倒し、歩き出す。
 
 すると、突然────





「…………えっ?」

 僕は目を覚ました。

 見慣れた、天井……。


 僕は現実世界のベットの中で、目を覚ます。


 ……あれ?

 …………。

 僕は確かに、ゲーム『ラスト・パラダイス』をプレイしていた。

 ゲーム世界に入り、迷宮を攻略していた途中だった。

 ログアウトした覚えはない。






 
 ……。

 コボルトの谷で、二周目の×印を付けたのが、大体夜の九時くらいだ。

 それから三時間くらいは、探索していたと思う。


 ということは────

 ゲーム時間の午前零時に、強制的にログアウトさせられた。
 ということだろうか?

 ……多分、そうだろう。




 ────どうして?
 疑問が尽きないが、そんな事を考えている時間はない。
 

 現実世界の一日は、もう始まっている。

 学校に行く仕度をしなくては……。


 僕はベットから降りて、洗面所に向かった。


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