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スライムの森

第10話 命を懸けた交渉 B

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 このゲームのNPCは、ちゃんとものを考えている様だ。
 

 『死にたくない』という感情があって、プレイヤーの無謀な命令には反抗する。

 この先に二人で進むには、彼を説得する必要があるらしい。
 

「聞いてください。スズヨウさん、僕には、魔物に対抗する力があるんです。……もう一度、言います。雇い主として命令します。この先に進んでください────」 

 僕がそう言うと、スズヨウさんの全身から殺気が滲み出る。


「解んねぇガキだな。お前、何なんだよ。魔法の使えない魔法使いに、何が出来るって言うんだ!! 勇者ごっこなら一人でやれよ。────俺はまだ死にたくねーんだ! 巻き込むんじゃねー!!」


 スズヨウは僕に短剣を向け、構えながら近づいてくる。
 ────脅しではない。

 彼は本気で、僕を殺す気でいる。

 
 ……。

 それはそうか、彼の中では──
 この『先に進んで魔物に殺される』か、それともここで『僕を殺して生きて村に帰る』かの選択なんだ。
 
 雇い主を殺せば、冒険者ギルドでどんなペナルティを彼が負うかは分からない。

 ────ただ、死ぬよりはいい。


 そう考えて、彼は行動している。
 ただ、こっちだって、引くわけにはいかない。
 
 僕はスズヨウさんが構えた短剣を狙い、ダークショットを放った。








 ────ドウッ!!!!!

 キィィイイイイインン!!!!

 
 弾丸が短剣に当たり、彼の手から弾き飛ばす。

 これでスズヨウさんは、丸腰になった。 
 僕は左手を銃の形にしたままで、彼に向け続ける。

「もう一度、言います。僕には魔物に対抗する手段があります。────僕の言う通り、この先に進むか……それとも、ここで死ぬか────選んでください。スズヨウさん……。」


 僕はこの時点で、本気で彼を殺す気はない────


 だが、スズヨウさんがまだ殺す気で襲って来るなら、ダークショットで迎撃する気でいる。
 
 その結果、彼は死ぬかもしれないが……。

 僕に躊躇は無い。


 向こうは本気で、僕を殺す気でいた。

 こっちも、相手を攻撃する覚悟で、交渉に臨む必要がある。

 …………。

 ……。




 僕たちは暫し、無言で睨み合う。
 そして────

「……わかった、先に進めば、いいんだな」


 スズヨウさんが降参し、北西へと進み出した。

 僕も後を追うように、スライムの森へと続く道を進む。

 
 スライムが出現した。
 スズヨウさんに襲い掛かる魔物を、僕が後方からダークショットで仕留める。

 一撃でスライムは四散した。


 僕たちはお互いに、無言で道を進む。

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