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追放された聖女の物語
第74話 悪魔へと至る道程 7 A
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私は激痛に苛まれながら、困惑する。
いきなり黒い塊に襲われたと思ったら、顔の半分が爛れてしまっている。
いったい、何が起こった?
――何だ、これは?
「あー、さっきの聖女はんの攻撃、綺麗に跳ね返されましたなぁ。まあ、あれや、人を呪わば穴二つっちゅうやっちゃな! あっははッ!!」
あっはは、じゃあないわ。
何よそれ!!
私の攻撃が跳ね返されて、こうなったの?
――それじゃあ、あの偽聖女が?
何であいつが、そんなこと出来るのよ!!
「う~ん、あの偽聖女はんな。冥界神っちゅうごっつい神様の加護受けてはんねん。それで呪いを跳ね返してな、聖女はんの綺麗な顔が、こないなことに……」
「じょ、冗談じゃないわ! あんた、攻撃しても大丈夫って言ったじゃない!!」
私はベルゼブブに抗議する。
「いや、ワイ大丈夫とは、言うとらんよ。あの偽聖女はんの中に、死神はもうおらんて、言うただけで……嘘はついてへんよ」
くっ、この糞悪魔――
屁理屈を言いやがって……。
どうやら偽聖女に放った呪いは、こっちに返されたようだ。
だが、これと同じ苦痛を、阿呆王子も受けている。
奴にダメージを与えられたなら、今回は痛み分け――
「いや、残念ながら、あの王子はんも無傷でっせ。あの王子はんな、邪竜王はんに呪われてますねん。この世界最強の、竜の呪いや――いくらこのワイ、悪魔ベルゼブブさんの呪いでも、あれには勝てまへん」
――は?
じゃあ、なに?
奴に放った呪いは、無駄打ちだったというの?
「そやねん、あの王子はんは化け物ですわ。――呪いを受けた者の気を狂わせて、怒りを増大させて、手当たり次第に人を殺すようになるっちゅう、えげつない呪いをうけて、いまだに正気を保っとる。それどころか、呪いの力を制御して、利用してるなんてな。チーターやでチーター!!」
こいつはそれを知っていて、私に奴らを攻撃するように仕向けていた……。
こうなることが、解かっていて――
何が狙いだ?
この悪魔は味方面しているけれど、味方ではない。
こいつの真意を見極めないと、取り返しのつかないことに――
いや、待て……
今はこいつの狙いを、悠長に考えている場合ではない。
この牢屋には、豪華な調度品がしつらえられている。
牢屋には必要のない鏡も、部屋にある。
私はその鏡を見て、愕然とする。
顔の半分が、爛れた醜い顔を……。
この顔を見られてしまえば、チェルズスカルに見切りを付けられる。
あの男はナルシストで、人の顔の美醜にも五月蠅い。
あいつが私を気に入っているのは、適当に即興で作った『家族の為に』という嘘話が受けたのもあるが、それ以前に――
私の顔が美しいという、前提があってのことだ。
私の顔が醜ければ、あいつは――
早く!
ここから、逃げなければ……。
聖女殺害の実行犯として、どんな処罰を受けるか――
最悪……拷問されて、公開処刑される。
なんてことにも、なりかねない。
だがここは、牢屋だ。
逃げたくても、逃げれない。
どうすれば――
「なんや、ここから出たいんか? それやったら、ここから出られる力を与えれんで? どないする、聖女はん?」
――?!
ここから脱出できる力――?
コイツの言うことは、信用できない。
悪魔の助言に、従うのは危険だ。
だが、私に対してこれまで『嘘』はついてこなかった。
ここから出れる、というのは本当だろう。
危険だが、選択肢がない。
「いいわ、ベルゼブブ!! あんたの言うその力を、私によこしなさい!!」
「……ええよ、ほな。これを飲んで貰いまひょか」
ベルゼブブはそう言うと、自分の身体を材料に醜悪な液体を作り出した。
それを取り出したコップに、なみなみと注ぐ。
き、汚らしい!!
こ、これを私に飲めというの??
でも、ここから逃げる為には――
私は吐き気を押さえ、その醜悪な液体を無理やり飲み込んだ。
「ぐっ、ごほっ、ごほっ……」
悪魔の作りだした液体を飲み込んだ私は、自分の身体を無数のハエへと変化させることが出来るようになった。
無数のハエへと変化した私は、ベルゼブブと共に牢を抜け出し、そのままチャルズコートを出国し、ピレンゾルへと向かう。
いきなり黒い塊に襲われたと思ったら、顔の半分が爛れてしまっている。
いったい、何が起こった?
――何だ、これは?
「あー、さっきの聖女はんの攻撃、綺麗に跳ね返されましたなぁ。まあ、あれや、人を呪わば穴二つっちゅうやっちゃな! あっははッ!!」
あっはは、じゃあないわ。
何よそれ!!
私の攻撃が跳ね返されて、こうなったの?
――それじゃあ、あの偽聖女が?
何であいつが、そんなこと出来るのよ!!
「う~ん、あの偽聖女はんな。冥界神っちゅうごっつい神様の加護受けてはんねん。それで呪いを跳ね返してな、聖女はんの綺麗な顔が、こないなことに……」
「じょ、冗談じゃないわ! あんた、攻撃しても大丈夫って言ったじゃない!!」
私はベルゼブブに抗議する。
「いや、ワイ大丈夫とは、言うとらんよ。あの偽聖女はんの中に、死神はもうおらんて、言うただけで……嘘はついてへんよ」
くっ、この糞悪魔――
屁理屈を言いやがって……。
どうやら偽聖女に放った呪いは、こっちに返されたようだ。
だが、これと同じ苦痛を、阿呆王子も受けている。
奴にダメージを与えられたなら、今回は痛み分け――
「いや、残念ながら、あの王子はんも無傷でっせ。あの王子はんな、邪竜王はんに呪われてますねん。この世界最強の、竜の呪いや――いくらこのワイ、悪魔ベルゼブブさんの呪いでも、あれには勝てまへん」
――は?
じゃあ、なに?
奴に放った呪いは、無駄打ちだったというの?
「そやねん、あの王子はんは化け物ですわ。――呪いを受けた者の気を狂わせて、怒りを増大させて、手当たり次第に人を殺すようになるっちゅう、えげつない呪いをうけて、いまだに正気を保っとる。それどころか、呪いの力を制御して、利用してるなんてな。チーターやでチーター!!」
こいつはそれを知っていて、私に奴らを攻撃するように仕向けていた……。
こうなることが、解かっていて――
何が狙いだ?
この悪魔は味方面しているけれど、味方ではない。
こいつの真意を見極めないと、取り返しのつかないことに――
いや、待て……
今はこいつの狙いを、悠長に考えている場合ではない。
この牢屋には、豪華な調度品がしつらえられている。
牢屋には必要のない鏡も、部屋にある。
私はその鏡を見て、愕然とする。
顔の半分が、爛れた醜い顔を……。
この顔を見られてしまえば、チェルズスカルに見切りを付けられる。
あの男はナルシストで、人の顔の美醜にも五月蠅い。
あいつが私を気に入っているのは、適当に即興で作った『家族の為に』という嘘話が受けたのもあるが、それ以前に――
私の顔が美しいという、前提があってのことだ。
私の顔が醜ければ、あいつは――
早く!
ここから、逃げなければ……。
聖女殺害の実行犯として、どんな処罰を受けるか――
最悪……拷問されて、公開処刑される。
なんてことにも、なりかねない。
だがここは、牢屋だ。
逃げたくても、逃げれない。
どうすれば――
「なんや、ここから出たいんか? それやったら、ここから出られる力を与えれんで? どないする、聖女はん?」
――?!
ここから脱出できる力――?
コイツの言うことは、信用できない。
悪魔の助言に、従うのは危険だ。
だが、私に対してこれまで『嘘』はついてこなかった。
ここから出れる、というのは本当だろう。
危険だが、選択肢がない。
「いいわ、ベルゼブブ!! あんたの言うその力を、私によこしなさい!!」
「……ええよ、ほな。これを飲んで貰いまひょか」
ベルゼブブはそう言うと、自分の身体を材料に醜悪な液体を作り出した。
それを取り出したコップに、なみなみと注ぐ。
き、汚らしい!!
こ、これを私に飲めというの??
でも、ここから逃げる為には――
私は吐き気を押さえ、その醜悪な液体を無理やり飲み込んだ。
「ぐっ、ごほっ、ごほっ……」
悪魔の作りだした液体を飲み込んだ私は、自分の身体を無数のハエへと変化させることが出来るようになった。
無数のハエへと変化した私は、ベルゼブブと共に牢を抜け出し、そのままチャルズコートを出国し、ピレンゾルへと向かう。
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