101 / 126
追放された聖女の物語
第73話 悪魔へと至る道程 6 A
しおりを挟む
私たちは狙い通りに、聖女ローゼレミーを殺した。
私が消耗させて聖女の力で回復する余力を奪ってから、ベルゼブブが隙を作り、シュドナイが止めを刺した。
あのババアの胸に、剣を突き刺して確かに殺した。
そう、聖女殺害には成功したのだが――
私が再び、聖女の力を取り戻すことはなかった。
そして私は、チャルズコートの中央神殿の牢屋に監禁されている。
「どういう……ことよ?」
聖女選出には、タイムラグがある。
聖女が死んでから、次の聖女が誕生するまで、時間が空くのはよくあることだ。
それは、聞いている。
だから、最高司祭のチェルズスカルも、まだ様子を見ている。
――まだ、殺されてはいない。
それどころか、この部屋の調度品は高級品で揃えられているし、提供される料理も豪華なものだった。
牢屋に入れられているといっても、扱いは悪くない。
私が再び聖女となる可能性は、まだある。
この美貌と身体を失うのは、惜しいというのもあるだろう。
その証拠に、あの男は毎晩のように、ここを訪れる。
当面の身の安全は保障されている、と考えていいだろう。
聖女殺害の事実は、まだチャルズコートの上層部しか知らない。
この事件をどう扱うのかで、揉めているそうだ。
リーズラグドとの全面戦争を主張する勢力が半数――
首謀者の王子アレスの首で、事を収めようという勢力が半数。
病死という事で事を収めようという、臆病者もいたようだが少数派だ。
私と接触する前からリーズラグドへ進行したがっていたチェルズスカルは、当然主戦派だ。自ら軍を率いて敵国を制圧すると息巻いている。
チェルズスカルは聖女を早死にさせるために、用意していた策を変更した。
大型モンスターを発生させて聖女の結界にぶつける、そのために発生させたモンスターの群れをリーズラグド方面へと誘導し、敵の力を削ぐ手筈を整えている。
チャルズコートは、属国の数も多い。
北の大国とも事前に話を付けて、援軍を派遣して貰う密約も取り付けてある。
チェルズスカルの見立てでは、決戦時の両勢力の動員兵力には、二倍ほどの差が出るだろうと自慢していた。
戦争は数の多いほうが勝つ。
この兵力差なら、確実にリーズラグドに勝てるらしい。
チェルズスカルは私を抱きしめながら、夢を語る。
リーズラグドを占領し、新たなる王として君臨すると豪語し、自分が新国王となった暁には、私を王妃として迎え入れると言っている。
そして、人質となっている(設定の)私の家族を解放し、皆で暮らそうと言ってきた。
「ありがとうございます。チェルズスカル様。ローゼリア、嬉しい!!」
精一杯媚びまくって、好感度を上げておく。
私は感動して、泣いているふりをしながら――
両親を始末する計画を立てる。
リーズラグドを占領してから調べられれば、私の家族が人質になどされていないことがバレるだろう(まだ生きていればだが)その前に口を封じる。
そうだわ!
シュドナイに始末させましょう。
私はシュドナイと連絡を取りたいと、チェルズスカルにお願いした。
するとチェルズスカルは、あからさまに不機嫌な顔をして――
「奴は、もうここにはいない。――この神殿から追い払った」
そう言った。
まさかもう、殺されているのか?
あいつに死なれるのは困る。
便利な手駒が、一つ減ってしまう。
生きているのであれば、手元に戻したいが――
けれどここで、チェルズスカルの機嫌を損ねる方が、損失は大きい……。
瞬時にそう計算した私は、すかさず――
「そうですか、それは助かります。あの男は、しつこくて……正直困っておりましたの。追い払って下さり、感謝しておりますわ」
私はそう言って、チェルズスカルの機嫌を取った。
奴は満更でもなさそうな、得意げな顔で私をきつく抱きしめる。
私が消耗させて聖女の力で回復する余力を奪ってから、ベルゼブブが隙を作り、シュドナイが止めを刺した。
あのババアの胸に、剣を突き刺して確かに殺した。
そう、聖女殺害には成功したのだが――
私が再び、聖女の力を取り戻すことはなかった。
そして私は、チャルズコートの中央神殿の牢屋に監禁されている。
「どういう……ことよ?」
聖女選出には、タイムラグがある。
聖女が死んでから、次の聖女が誕生するまで、時間が空くのはよくあることだ。
それは、聞いている。
だから、最高司祭のチェルズスカルも、まだ様子を見ている。
――まだ、殺されてはいない。
それどころか、この部屋の調度品は高級品で揃えられているし、提供される料理も豪華なものだった。
牢屋に入れられているといっても、扱いは悪くない。
私が再び聖女となる可能性は、まだある。
この美貌と身体を失うのは、惜しいというのもあるだろう。
その証拠に、あの男は毎晩のように、ここを訪れる。
当面の身の安全は保障されている、と考えていいだろう。
聖女殺害の事実は、まだチャルズコートの上層部しか知らない。
この事件をどう扱うのかで、揉めているそうだ。
リーズラグドとの全面戦争を主張する勢力が半数――
首謀者の王子アレスの首で、事を収めようという勢力が半数。
病死という事で事を収めようという、臆病者もいたようだが少数派だ。
私と接触する前からリーズラグドへ進行したがっていたチェルズスカルは、当然主戦派だ。自ら軍を率いて敵国を制圧すると息巻いている。
チェルズスカルは聖女を早死にさせるために、用意していた策を変更した。
大型モンスターを発生させて聖女の結界にぶつける、そのために発生させたモンスターの群れをリーズラグド方面へと誘導し、敵の力を削ぐ手筈を整えている。
チャルズコートは、属国の数も多い。
北の大国とも事前に話を付けて、援軍を派遣して貰う密約も取り付けてある。
チェルズスカルの見立てでは、決戦時の両勢力の動員兵力には、二倍ほどの差が出るだろうと自慢していた。
戦争は数の多いほうが勝つ。
この兵力差なら、確実にリーズラグドに勝てるらしい。
チェルズスカルは私を抱きしめながら、夢を語る。
リーズラグドを占領し、新たなる王として君臨すると豪語し、自分が新国王となった暁には、私を王妃として迎え入れると言っている。
そして、人質となっている(設定の)私の家族を解放し、皆で暮らそうと言ってきた。
「ありがとうございます。チェルズスカル様。ローゼリア、嬉しい!!」
精一杯媚びまくって、好感度を上げておく。
私は感動して、泣いているふりをしながら――
両親を始末する計画を立てる。
リーズラグドを占領してから調べられれば、私の家族が人質になどされていないことがバレるだろう(まだ生きていればだが)その前に口を封じる。
そうだわ!
シュドナイに始末させましょう。
私はシュドナイと連絡を取りたいと、チェルズスカルにお願いした。
するとチェルズスカルは、あからさまに不機嫌な顔をして――
「奴は、もうここにはいない。――この神殿から追い払った」
そう言った。
まさかもう、殺されているのか?
あいつに死なれるのは困る。
便利な手駒が、一つ減ってしまう。
生きているのであれば、手元に戻したいが――
けれどここで、チェルズスカルの機嫌を損ねる方が、損失は大きい……。
瞬時にそう計算した私は、すかさず――
「そうですか、それは助かります。あの男は、しつこくて……正直困っておりましたの。追い払って下さり、感謝しておりますわ」
私はそう言って、チェルズスカルの機嫌を取った。
奴は満更でもなさそうな、得意げな顔で私をきつく抱きしめる。
2
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。
なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。
王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる