聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

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リーズラグドの叡智

第68話 一秒先の未来 1 B

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 この国の要人を暗殺し、混乱を引き起こす。
 ――それが我らの任務なのだから。


 吾輩は、偽聖女を発見した。

 なんでも、此奴は――
 毎日街に出て、食べ歩きをしているそうだ。

 今も馬鹿面を下げて、街を歩いている。

 ――さっさとこいつを片付けて、ピレンゾルにいる王子アレスを始末しに行こう。
 
 向こうにも、かなりの人数が送られているはずなのだが――
 いまだに、成功の知らせが来ない。

 手練れの暗殺者に、護られているのだろう。
 吾輩が赴いて、王子を始末してやる。


 
 ――まずは、コイツからだ。
 吾輩が攻撃に移ろうとすると、一秒先の未来が見えた。
 
 吾輩の攻撃が、防がれている。
 馬鹿面の側に控えている胸のデカい女に、木製のトレイで――

 なっ――
 吾輩は即座に攻撃を中止して、一旦仕切り直す。

 そして先ほどとは別の角度から、偽聖女を始末しようと隠し持った剣の柄を握る。


 一秒後――
 吾輩の攻撃は胸のデカい女に、またしても防がれていた。


 その後、もう一度別の攻撃を試してみたが――
 無駄に終った。

 馬鹿なッ!!





 これまでにも、手練れに攻撃が防がれる未来は何度も見たが、別の場所を攻撃すれば敵に防がれることは無くなる。

 こちらの攻撃が読まれて防がれるという事は、それ以外の箇所への攻撃は敵にとって想定外の一撃、という事になる。

 だからこそ、この未來視の能力を手に入れた吾輩の攻撃は、必殺の一撃となる。

 二撃目以降も、完全に防がれる。
 そんな未来が見えたのは、初めてのことだ。

 偽聖女の周囲の女たちが、吾輩のことを訝しみだす。
 

 ――暗殺は中止だ。
 あの胸の大きな女がいる限り、偽聖女に手は出せない。

 暗殺の決行は予定通り、護衛が外れる式典の日にするしかない。





 式典当日――

 あの偽聖女が、自分は聖女ではないと自白した。
 予想外の行動だが、これはチャンスだ。


 吾輩は部下たちに合図を送り、暗殺を決行する。
 吾輩は、投剣の腕も一流だ。

 四人で一斉に攻撃する。

 吾輩が標的へと、投げた暗器が――
 吾輩の胸に、突き刺さっていた。

 一秒後の未来を見た吾輩は、即座に攻撃を中止する。


 部下三人が、死んでいた。




 あれに手を出せば――
 確実に殺される。

 吾輩は初めて、心の底から恐怖した。
 あれの暗殺は、諦めるしかない。


 



 暗殺失敗から、一か月――

 吾輩は偽聖女の暗殺を断念して、別のターゲットを殺すことにした。
 我らに与えられた任務は、この国の要人を殺し混乱を引き起こし、この国を弱体化させることだ。


 特定の誰かを殺すことに、拘る必要はない。

 吾輩もこの国に潜伏して、神殿関係者とも接触し情報を集めてきている。

 誰を殺せば、この国に最もダメージがあるのか――
 一流の剣士である吾輩には、敵の弱点が手に取るようにわかる。


 この国の弱点は――
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