聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

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リーズラグドの叡智

第64話 悪役令嬢とお目付けメイド 1 B

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 ソフィ様がお祈りと演説をするその場で、大司教様は何か意地悪をする気でいるのでしょう。
 
 私も神殿の式典に、出席予定です。

 こうなったら――
 私がその時に、ソフィ様の味方になればいいのですわ!!


 お父様や大司教様の野望は、この私が――
 見事、打ち砕いて見せますわ。
 




*************************


 この王国の第一王子、アレス様の正妻になることが決まっているダルフォルネ領のソフィ様が、王都にいらっしゃっています。


 明日はそのソフィ様をお招きして――

 我がルーズベリル領の姫君。
 リィクララ様との、お茶会が予定されています。




 ルーズベリル領は、この国の四大貴族の一つ。
 王都の西に広大な領土を持つ、由緒ある公爵家です。


 当主の公爵様の娘のリィクララ様は、政略結婚でアレス様の側室となることが決まっています。

 将来の正室ソフィ様と、側室になるリィクララ様――
 この機会に交友を持たせておこうという思惑から、お茶会が企画されました。



 準備は忙しかったですが、後は明日を待つだけです。
 明日のお茶会はリィクララ様にとっても、重要な催しとなります。

 明日を万全な体調で迎えるために、早く眠って欲しいのですが、姫様はまだ起きておられます。窓の外を見つめながら――


「わたくしは、悪役令嬢……」

 そう、ぼそっと呟いて、黄昏ています。



 …………。
 笑ってはいけません。

 リィクララ様は真剣に、役に入り込んでいらっしゃるのです。


 去年から王都で流行っている観劇。 
 その劇に出てくるヒロインの恋敵のご令嬢に、姫様は自己投影しているのです。





 ――四年前は『姫騎士』でした。
 普段は怖がりで臆病な姫様ですが、時折突拍子もない行動に出ることがあります。
 
 ある時お城を一人で抜け出して、魔物退治に出てしまいました。


「わたくしは、姫騎士……」

 とか言って……。



 当然、魔物に敵う訳もなく――
 それどころか、姫様は魔物を見ただけで、ビビッて腰を抜かしたそうです。

 そんなリィクララ様のピンチを、同じく魔物退治に赴かれていたアレス様が偶然見つけて、助けて下さいました。


 それがお二人の、運命の出会いです。
 
 結果を見れば、アレス様とのご縁が出来て良かったのですが――
 姫様の無謀な行動に、お城は大騒ぎでした。


 アレス様がいらっしゃらなければ、リィクララ様は魔物に殺されていました。


 使用人が集まり、大反省会が行われ――

 教育方針の大幅な見直しがなされます。
 それまで姫様を溺愛していた公爵様も心を鬼にして、私に姫様を折檻する許可を出しました。




 そんなことがあってからも姫様は、懲りずに毎日剣を振っていました。
 しかし、あまり上達することもなく――

 現在は、『悪役令嬢』になっておられます。


 まあ、姫騎士の時よりは、周りに害はないので良いのですが――
 ……何か嫌な予感が致します。




 ――翌日。
 いやな予感が当たりました。

「ソフィ様、私こそがアレス様の正室に相応しいのですわ。ですから、あなた様には身を引いて頂きたいのですわ!!」

 お茶会が始まるや否や、リィクララ様がトチ狂いました。

「おーほほほっ!!」

 姫様は笑っておられますが――
 笑っている場合ではありません。





 何を言い出すんですか、いきなり――

 この馬鹿は!!

 早くフォローしなければいけません。
 こういう事態に対処する為に、私が姫様にお付きしているのですから――
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