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聖女暗殺事件

第63話 破滅へと至る道筋 3 B

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 ――なんてことだ。
 アレス王子とローゼリアはグルだ。
 
 だとすると――
 アレス王子は計画的にローゼリアを使い、この国を滅茶苦茶にして、チャルズコートの聖女まで殺害したことになる。


 なぜ、そんな――

 ……決まっている。
 弱った周辺国を、侵略し支配する為だ。

 そして、ゆくゆくは世界を征服する。



 まずは、聖女を失ったチャルズコート――

 そして、次に狙うのは……
 この、疲弊したピレンゾルだろう。


 僕はアレス王子のことを思い出す。
 手当たり次第に女を貪る、気味の悪い男だった。

 ――あいつなら、やりかねない。

 あの下劣な男の野心を打ち砕くためにも、チャルズコートからの要請には全力で応じるべきだ。

 ピレンゾルとチャルズコートが、手を組んで立ち向かう。

 ――それしかない。



 だが――
 会議の行方は思わしくない方向で、纏まろうとしている。

 最初はチャルズコートの参戦要求に、応じるべきという意見が大勢だった。
 実権を握っている、前王妃の派閥がそう主張していた。


 ――しかし、王家にはまったくと言っていいほど、余力が無い。

 国庫は底を突いているので、前王妃の派閥から兵士と資金を出してくれと、国王派が要請すると、彼らは途端に意見を変えた。

 最終的には、『最小限の兵力でリーズラグドを攻撃して、戦後チャルズコートから報奨金を貰おう』という案に落ち着いた。

 リーズラグドがチャルズコートに、ぼろ負けするようなら――
 その時に、本気を出そうという事になった。

 

 良く言えば、状況に応じて戦い方を変える賢者。

 悪く言えば……

 他力本願に、火事場泥棒――
 実に、我が国らしい方針だ。



 だが――
 それでは駄目だ。
 
 チャルズコートが、敵に勝てばそれでいい。
 
 しかし負ければ、次はこの国が――
 あの欲望のままに行動する、飢えた獣の餌食になってしまう。

 そうならない為にも、最初から全力でチャルズコートを支援すべきだ。
 この国の方針をそう変えたいが、残念ながら僕には発言権が無い。


 それに――
 この国に戦争をする、余裕がないことも事実だ。

 力の無い者の全力など、たかが知れている。



 ――そう、だよな。

 僕が何か言ったところで、会議の結論が変わるわけではない。
 そもそも、アレス王子とローゼリアが繋がっているという証拠がない。


 証拠になりそうなのは、あの娼婦どもだが――

 奴らはすでに、アレス王子が連れ去っている。
 今頃あの娼婦どもは、リーズラグドで口封じに処分されているはずだ。



 ――もう、どうしょうもない。

 世界平和の最後の希望は、チャルズコートだ。
 彼らが悪の王国リーズラグドを、打ち破ってくれるのを祈るしかない。


 頑張れ! 
 チャルズコート!!

 …………。
 何もできない僕は、目を瞑ってチャルズコートの勝利を祈った。

 こんな祈りなど、何の役にも立たないと分かっていても――
 祈らずにはいられなかった。
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