上 下
63 / 126
聖女暗殺事件

第52話 ロザリアの信頼 1 A

しおりを挟む
 ローゼリア事件から、半年が経過した。

 俺は後宮でソフィと過ごした後、ロザリアの元を訪れている。



 ロザリアは窮屈な貴族社会を嫌い、俺のところに身を寄せている。
 
 自分の好きな研究に没頭していたいというのが彼女の望みで、それ以外は何もしたくないというのが、ロザリアという女だ。

 高位貴族の家に生まれた彼女に、そんな我儘は許されなかったが、俺の妾になることで、彼女は自由を手に入れた。
 自分の研究時間の確保が第一で、少しずぼらなところのある女だ。

 研究以外は、日々ぐうたら暮らしている。



 頭脳明晰で研究熱心な才女なので、調べて欲しいことがある時は、真っ先に彼女を頼っている。


 俺は頼んでおいた調べ物の調査結果を聞きに、彼女の部屋を訪れた。

 王子と言う身分を考慮すれば、相手を呼びつけるのが筋なのだが、ロザリアは呼び出してもなかなか来ないので、こちらから出向くことが習慣になってしまっている。

 一応ノックしてから、ロザリアの部屋に入る。

 俺は椅子に座り――
 ロザリアはベットで寝そべりながら、本を読んでいる。

 彼女は本を読みながら、その片手間で問題なく調査結果の報告が出来る。
 無駄にハイスペックな女だ。 

 俺はロザリアから報告を受ける。
 


 彼女に頼んでいた調査、考察依頼は次の三つ。

 一、ソフィが見えるという死神ディースについて
 二、ローゼリア事件で俺が倒した集合体の正体
 三、悪魔召喚の魔導書について

 一と二はソフィが死神から聞いたという話を元に、裏付けと考察を頼んだ。

 ソフィが冥界の神に見初められ、死神がこの地に封印されていた破壊神を復活させ、それを俺が倒したという話の信憑性。


 ロザリアはソフィが聞いたという死神の話は、信用に値するものだと結論付けた。


 ローゼリア事件は、死を司る神の仕出かしたことだと、仮定すればしっくりくる。

 破壊神の姿は神話とはずいぶんと違うが、そもそも破壊神の魂は七つに分断されているし、肉体は滅んでいるはずだ。

 魂を呼び出す依り代として、死体の集合体を仮初の肉体として利用したのであれば、破壊神の姿が違うことも説明がつく。


 そして、封印されていた破壊神が討伐されたことで、この国に聖女は誕生しなくなるだろう、という話も筋が通っている。

 地母神ガイアが、聖女を誕生させる理由が無くなった以上、この国に聖女はもう生まれないだろう。




 だがそのことで、新たに問題が生じる。

 この国の国民に、聖女信仰は根強くある。

 聖女が誕生しない期間が続けば、国民の不安と不満が増大する。 
 それが為政者に向けられるようになる危険は大きい。


 今後の課題としては――
 そのことを国民に上手く説明して、納得させていかなければいけない。
 
 まずは、噂話や物語にその情報を盛り込んで、国民が受け入れやすい土壌を作るところから始めている。



 ソフィが聞いたというディースの話が本当なら――

 封じられていた破壊神が消えたことで、この国は聖女が居なくても『死の大地』になることは無くなった。
 聖女と言う不安定なシステムに、頼らなくても良くなったとも言える。

 その辺りをじっくり、国民に周知させていくしかない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

特典付きの錬金術師は異世界で無双したい。

TEFt
ファンタジー
しがないボッチの高校生の元に届いた謎のメール。それは訳のわからないアンケートであった。内容は記載されている職業を選ぶこと。思いつきでついついクリックしてしまった彼に訪れたのは死。そこから、彼のSecond life が今始まる___。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

処理中です...