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聖女を追放した国の物語
第29話 ネタバレ
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ここはリーズラグド王国の東の僻地。
聖女である私が何故こんな田舎まで出向いているのかというと、あの阿呆王子を捕獲する為だ。
『聖(笑)』の展開通りに、物語を進めるために……。
そのためには阿呆王子の軍と戦って、やっつけなければならない。
これからこの私の物語は、こう進行することになる。
~ネタバレ注意よ(^_-)-☆~
まずは阿呆王子を捕らえて連行し、牢屋に入れる。
その後、わざと脱走させ悪魔召喚の魔術書が置いてある部屋へと誘導する。
阿呆王子は事態を打開する為に、悪魔に助力を乞うだろう。
悪魔は偽聖女を生贄として、要求するはずだ。
公開処刑を行う予定の偽聖女の所まで、阿呆王子はやってくる。
衆目にさらされる中で、悪魔を召喚させる。
おぞましい悪魔を召喚した阿呆王子は国民から嫌われ、華麗に悪魔を退治する私は聖女としてさらなる名声をえる。
私が最後に、この国を捨て去って『ざまぁ』完成。
ピレンゾルに帰還した私は、ピレールと結婚式を挙げてハッピーエンドとなる。
完璧な計画――
文句なしの筋書き、最高の物語だ。
そのための第一段階としてダルフォルネに命じて、阿呆を挑発しておびき寄せた。
戦争などという野蛮なことには知識が無いので、そっちは部下に任せている。
私の役目は聖女の癒しを、決められたタイミングで発動するだけだ。
たまに気分のいい時には、ボーナスで癒しを追加してあげたりもする。
戦争というのはどういうものか、少しだけ興味があり初日は観戦していたが、思ったよりも地味で見応えが無かった。
それ以降、戦場を見物したことは無い。
勝ちが決まっている戦いだ。
見ていてもつまらない。
……敵が降伏した後で、敵兵を処刑するのは楽しそうだが――
そうだ!
阿呆王子に味方の首を斬らせてやろう――
お前が、部下を処刑しろ。
それを降伏の条件にするのだ。
早く降伏してこないかしら――
――あら?
「なんだか、外が騒がしいわね?」
専用の豪華な天幕で朝食を取りながら、外の様子がおかしいことに気付いた。
聖女十字軍が阿呆王子を懲らしめる為の、聖戦を行っている最中だ。
戦場に近いこの天幕にも戦いの騒音は響いてくるが、こんなに近くで騒がしくなったことなどない。ひょっとして阿呆王子を捕らえた部隊が戻ってきたのだろうか?
捕らわれの阿呆王子の顔を拝もうと立ち上がると、天幕に険しい形相をしたシュドナイが入ってきた。
シュドナイは聖女十字軍の副団長で、私の頼れる側近だ。
「聖女様! 緊急事態です!! ご無礼を、お許しください――」
「ええっ??」
シュドナイは私を抱き上げると、外に連れて行き馬に乗せる。
私の後ろにシュドナイも飛び乗り、馬を走らせる。
私達の後ろには、聖女親衛隊が数人追従してくる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいシュドナイ。戻って、阿呆王子を懲らしめないと――」
「聖女様、それどころではありません!! 反乱です。軍の大半が聖女様に反旗を翻しました!!」
「は? 何よそれ? 反乱? なんで?? 私は聖女なのよ!!」
「おそらく、食料が無くなったのが原因かと。一般兵への支給が昨日から滞っておりましたので――」
「は、はぁ? なによそれ、そんな馬鹿みたいな理由で反乱ですって? 食料なんてその辺の住人に提供させればいいのよ!! パンが無ければ略奪すればいいのッ!
そうよっ、聖女への寄進よ。ありがたがって差し出すわ」
「それが、この辺りの農村は、部下たちが遊び半分に燃やしてしまっていて、略奪した分以外は燃えているでしょう。そうでなくとも、千人規模の兵士を賄う量は調達出来なかったと存じます」
「千人? 一般兵は二千は居るでしょ?」
「いえ、敵軍との戦闘で、半分ほどに減っております」
そんな馬鹿な。
なぜそんなに、兵士が減っているの?
聖(笑)では聖女のいるピレンゾル軍は、阿呆王子の軍隊を打ち破るのだ。
負けるはずがない。
では、なぜこんな状況に陥っているのだ?
もしやダルフォルネの奴が、裏切ったのか?
いや、あの馬鹿に私を出し抜く芸当が出来るとは思えない――
……ではなぜ?
考えても解らなかったが、とりあえず状況を確認する。
あの戦場から一日かけて馬を走らせ、野宿をしている。
野宿など御免だったが、シュドナイが私の身の安全のためだと言って聞かなかった。民家の住人を追い出して寝床を確保すればいいのに――
ひょっとしたらシュドナイは、野宿の方が私と密着できると考えて、こんな提案をしたのかもしれない。
私はシュドナイの逞しい胸にこの身を預け、これからどうするかを考える。
聖女十字軍に反乱が起こり、その混乱からここまで逃げてきた。
逃げることが出来たのは、私とシュドナイの他は親衛隊が五人だけ。
この数では流石に、阿呆王子を捕らえるのは無理だろう。
それどころかここに敵の軍勢が来れば、私の方が捕らえられてしまうではないか。
まずは戦力を確保しなくては――
とりあえずは、ダルフォルネを利用する。
あいつの持つ軍事力で、私を守らせればいい。
そして、阿呆王子を捕らえてからの計画を大幅に変えなくては……。
阿呆王子の捕獲に失敗した以上は、計画の変更はやむを得ない。
偽聖女の公開処刑を早めよう。
中央の大広場に、処刑場はすでに完成している。
聖女である私が何故こんな田舎まで出向いているのかというと、あの阿呆王子を捕獲する為だ。
『聖(笑)』の展開通りに、物語を進めるために……。
そのためには阿呆王子の軍と戦って、やっつけなければならない。
これからこの私の物語は、こう進行することになる。
~ネタバレ注意よ(^_-)-☆~
まずは阿呆王子を捕らえて連行し、牢屋に入れる。
その後、わざと脱走させ悪魔召喚の魔術書が置いてある部屋へと誘導する。
阿呆王子は事態を打開する為に、悪魔に助力を乞うだろう。
悪魔は偽聖女を生贄として、要求するはずだ。
公開処刑を行う予定の偽聖女の所まで、阿呆王子はやってくる。
衆目にさらされる中で、悪魔を召喚させる。
おぞましい悪魔を召喚した阿呆王子は国民から嫌われ、華麗に悪魔を退治する私は聖女としてさらなる名声をえる。
私が最後に、この国を捨て去って『ざまぁ』完成。
ピレンゾルに帰還した私は、ピレールと結婚式を挙げてハッピーエンドとなる。
完璧な計画――
文句なしの筋書き、最高の物語だ。
そのための第一段階としてダルフォルネに命じて、阿呆を挑発しておびき寄せた。
戦争などという野蛮なことには知識が無いので、そっちは部下に任せている。
私の役目は聖女の癒しを、決められたタイミングで発動するだけだ。
たまに気分のいい時には、ボーナスで癒しを追加してあげたりもする。
戦争というのはどういうものか、少しだけ興味があり初日は観戦していたが、思ったよりも地味で見応えが無かった。
それ以降、戦場を見物したことは無い。
勝ちが決まっている戦いだ。
見ていてもつまらない。
……敵が降伏した後で、敵兵を処刑するのは楽しそうだが――
そうだ!
阿呆王子に味方の首を斬らせてやろう――
お前が、部下を処刑しろ。
それを降伏の条件にするのだ。
早く降伏してこないかしら――
――あら?
「なんだか、外が騒がしいわね?」
専用の豪華な天幕で朝食を取りながら、外の様子がおかしいことに気付いた。
聖女十字軍が阿呆王子を懲らしめる為の、聖戦を行っている最中だ。
戦場に近いこの天幕にも戦いの騒音は響いてくるが、こんなに近くで騒がしくなったことなどない。ひょっとして阿呆王子を捕らえた部隊が戻ってきたのだろうか?
捕らわれの阿呆王子の顔を拝もうと立ち上がると、天幕に険しい形相をしたシュドナイが入ってきた。
シュドナイは聖女十字軍の副団長で、私の頼れる側近だ。
「聖女様! 緊急事態です!! ご無礼を、お許しください――」
「ええっ??」
シュドナイは私を抱き上げると、外に連れて行き馬に乗せる。
私の後ろにシュドナイも飛び乗り、馬を走らせる。
私達の後ろには、聖女親衛隊が数人追従してくる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいシュドナイ。戻って、阿呆王子を懲らしめないと――」
「聖女様、それどころではありません!! 反乱です。軍の大半が聖女様に反旗を翻しました!!」
「は? 何よそれ? 反乱? なんで?? 私は聖女なのよ!!」
「おそらく、食料が無くなったのが原因かと。一般兵への支給が昨日から滞っておりましたので――」
「は、はぁ? なによそれ、そんな馬鹿みたいな理由で反乱ですって? 食料なんてその辺の住人に提供させればいいのよ!! パンが無ければ略奪すればいいのッ!
そうよっ、聖女への寄進よ。ありがたがって差し出すわ」
「それが、この辺りの農村は、部下たちが遊び半分に燃やしてしまっていて、略奪した分以外は燃えているでしょう。そうでなくとも、千人規模の兵士を賄う量は調達出来なかったと存じます」
「千人? 一般兵は二千は居るでしょ?」
「いえ、敵軍との戦闘で、半分ほどに減っております」
そんな馬鹿な。
なぜそんなに、兵士が減っているの?
聖(笑)では聖女のいるピレンゾル軍は、阿呆王子の軍隊を打ち破るのだ。
負けるはずがない。
では、なぜこんな状況に陥っているのだ?
もしやダルフォルネの奴が、裏切ったのか?
いや、あの馬鹿に私を出し抜く芸当が出来るとは思えない――
……ではなぜ?
考えても解らなかったが、とりあえず状況を確認する。
あの戦場から一日かけて馬を走らせ、野宿をしている。
野宿など御免だったが、シュドナイが私の身の安全のためだと言って聞かなかった。民家の住人を追い出して寝床を確保すればいいのに――
ひょっとしたらシュドナイは、野宿の方が私と密着できると考えて、こんな提案をしたのかもしれない。
私はシュドナイの逞しい胸にこの身を預け、これからどうするかを考える。
聖女十字軍に反乱が起こり、その混乱からここまで逃げてきた。
逃げることが出来たのは、私とシュドナイの他は親衛隊が五人だけ。
この数では流石に、阿呆王子を捕らえるのは無理だろう。
それどころかここに敵の軍勢が来れば、私の方が捕らえられてしまうではないか。
まずは戦力を確保しなくては――
とりあえずは、ダルフォルネを利用する。
あいつの持つ軍事力で、私を守らせればいい。
そして、阿呆王子を捕らえてからの計画を大幅に変えなくては……。
阿呆王子の捕獲に失敗した以上は、計画の変更はやむを得ない。
偽聖女の公開処刑を早めよう。
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