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冒険者編

第73話 VSミノタウロス B

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 さて──
 この間、俺はというと──
 ミノタウロスの戦闘を見ていた。

 最初に一撃を喰らった時に、なんとなく──
 こいつには勝てないと感じた。
 
 勝つためには、何かしらの工夫というか──
 自分の戦い方を、もっと進化させなければと思った。

 格好の教材は、目の前にいる。
 風魔法を戦闘の補助に取り入れた、ミノタウロス。
 
 だから俺は、ミノタウロスの戦い方を観察していた。



 ──もちろん何もせずに、ただ見ていたわけではない。

 敵の使っている風魔法に対して、弱点となる火の魔法で剣を覆った。
 味方のピンチには、いつでも駆けつけられる準備はしておく。

 モミジリや『青きサイの角』のメンバーが、上手く立ち回り時間を稼いでくれた。

 だから少しの時間だが、観察に専念できた。
 ミノタウロスは、風魔法を自身の周囲に纏っている。


 風の魔法を──
 まるでフラフープのように、自分の周囲に巡回させている。

 その一筋の強風の循環を、複数作り──
 攻撃時や移動時に、補助として使用している。

 
 もちろん攻撃魔法としても、利用している。
 風をかまいたちに変化させて、敵を切り裂く攻撃も出来る。

 弓などの攻撃を防ぐ、盾にもなる。

 『風陣』とでも呼ぶべき、風の結界。
 あれを俺も、真似してみよう。



 風を発生させてから、炎の剣と風の魔法の同時使用が、出来ていることに気付く。

 これまで試してきたが、練習では一度も上手く行かなかった。
 二属性、同時使用が出来た。

 炎の剣は一度作ってしまえば、後は魔力を込め続ければ維持できる。
 意識せずに炎の剣を維持できるので、風魔法に集中することが出来た。


 


 俺が炎の剣と、風魔法の同時使用に成功したところで。
 ──ミノタウロスの暴風の斧が、リカンドを吹き飛ばしていた。
 
 そこでミノタウロスは、纏っていた風魔法を使い切っている。

 
 俺はミノタウロスを攻撃する為に、走って距離を詰める。
 纏っている『風陣』の、一筋を使って加速する。

 流れる景色が加速する。
 思ったよりも、スピードが上がった。

 目前に迫ったミノタウロスに、炎の剣で斬りかかる。
 炎の剣は敵の太い胴を薙いで、その周囲を炎で燃やす。

 それと同時に、纏っていた残りの風陣三つを攻撃に使って、ミノタウロスの身体を風の刃で切り裂いた。




「ブモォォオオオっぁァアアあああ!!!」

 身体を切り裂き、燃やして、確実にダメージは与えたが──
 殺しきれなかった。

 雄たけびを上げたミノタウロスの身体から、渦を巻くように暴風が吹き荒れる。
 暴風に吹き飛ばされた俺は、拠点の壁に盛大にぶつかる。
 
「グッ……」

 受け身を取れなかった。
 ──マズい!!

 ミノタウロスは斧を構えて、俺に止めを刺そうと突進する。

 敵の大斧が、俺に目前に迫りくる。

 俺はとっさに、反転の風魔法で『空気の盾』を展開する。
 ミノタウロスの斧は、風の盾を切り裂いて、俺の構えた小楯にヒットするが、何とか受け止めきれた。  


 風属性の魔力を使っていたので、反転の属性変化がスムーズに出来た。

 ──反転の魔法との同時使用はやりやすい。

 それに気付いた俺は──
 空気の盾を作ると同時に、風の刃も作り出して、盾の左右から敵を攻撃する。
 

 二属性同時使用に成功し、風の刃がミノタウロスの身体を切り裂く。

 まだ死なないミノタウロスの後ろから、女戦士のミランダがハンマーで背中を強打した。彼女のスキル『怪力』を使用した渾身の一撃だ。


 さらに、スキル『全力攻撃』を使用したイルギットと、スキル『剣舞』を使ったリリーシアが、敵の左右から追撃を加える。


 最後は風の魔法を、剣に纏わせた俺が──
 ミノタウロスの首を切り落として、止めを刺した。

 ミノタウロスの血しぶきが、辺り一帯に舞い散る。



 このエリアを、危険区域に指定させた元凶。

 特殊進化個体の、討伐に成功した。

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