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冒険者編
第59話 ★転生者 ピョウヘイとピュロユキ 1 B
しおりを挟む俺はピュロユキに救援を求める。
俺がゴブリンを押さえている隙に、コイツを攻撃してくれ──
そう思って呼びかけたのだが、ピュロユキはゴブリンにビビッて、ガタガタ震えている。初めての戦闘で、足がすくんで動けないようだ。
そうこうしているうちに、俺はゴブリンとの押し合いに負けて、尻もちを搗く。
「う、うわっ!!」
──ドスンっ
マズいッ!
倒れたときに、剣を手放してしまっている。
逃げようっ!!
──と思ったその時に、ゴブリンが俺の腕に噛みついた。
鎧で護られていない、腕の内側……
そして、そのまま肉を喰い千切られた。
「ひぎゃっぁああああぁあ!!!」
あまりの痛みに、俺は絶叫した。
その声で、ピュロユキは緊張が解けて、動けるようになったらしい。
ゴブリンに向かって剣を投げつけた。
ゴブリンに近づくのは怖いが、俺のことは助けたい。
──そんな心理からの、行動だろう。
ピュロユキの投げた剣は、ゴブリンに弾かれて俺の頭に当たった。
ヘルメットのような防具。
革の兜をかぶっていたので、大したダメージは受けなかったが、これで俺たちは二人とも武器を手放した状態になってしまった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!!
何も考えが浮かばない。
ピュロユキは、腰を抜かしたようで、座り込んで立てないでいる。
ゴブリンが、俺の足を抑えつけて広げる。
な、なにを──?
よく分からないゴブリン行動に、俺が戸惑っていると──
ゴブリンが、俺の太ももを喰い千切った。
「あっ、あギャアあっぁっァアア!!!」
こいつは、人間の太ももが好物なのか──
俺たちは、剣を手放してしまっている。
ゴブリンは俺達のことを、自分の脅威ではないと判断して──
好きなところから、食べだしたようだ。
──グルメかよ!!
俺は心の中で、ゴブリンにツッコミを入れる。
そんな場合ではないのだが、前世からお笑いの才能を引き継いだ俺は、こんな時でもセンスのある掛け合いが閃いてしまう。
だが、今必要なのはお笑いの才能ではない。
目の前の脅威と、戦う力だ。
──残念だが、今の俺達にそれは無い。
「もう、駄目だ──」
ここで……
こんなところで、俺たちは終わるのか。
俺は──
敗北と、死を受け入れようとした。
その時に──
「──おい、大丈夫か? 助けは必要か!!」
力強い男の声が、草原に響く。
──た、助けが、来たのか?
俺は、もう動けない。
ゴブリンは、ピュロユキの太ももに噛みついている。
「た、助けて下さい!! 俺達、ゴブリンに襲われています!!」
俺は迷わず、助けを求める。
「わかった! 報酬は相場で良いか!!」
なんでもいい、早く助けてくれ!
「は、はい。わかりました。早くっ、お願いします!!」
俺たちの前に現れたのは、三十代後半くらいのベテラン冒険者だった。
彼らは五人組で、強そうに見えた。
彼らの出現に気付いたゴブリンは、ピュロユキを放してこん棒を拾う。
そして、五人組に向かって襲い掛かった。
五人組の内、先頭にいた大きめの盾を持った男が、ゴブリンのこん棒を受け止める。それから他の四人がゴブリンの周りを囲んで、ゴブリンを攻撃した。
一分ほどで、ゴブリンは動かなくなった。
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