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冒険者編

第58話 後始末と金の回収

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 俺はまだ息のあるチンピラ三人に、止めを刺しながら──
 フジインの言い訳を聞いていた。

 どうやらこいつらは、従魔付きの馬車を見て、行き当たりばったりで決闘騒ぎを起こしたのではなく、俺に狙いを定めて因縁を付けてきたようだ。


 まあ、その辺りは、今は置いておこう。

 まずは、決闘に勝ったのだから、敵から金を回収しなくては──
 俺は仲間に声をかけて、使えそうな装備や持ち物の回収に入る。

 アカネルとモミジリは『え~』とか『う~』とか言って嫌そうな様子だ。
 見物人も多くいるし、死体漁りは確かに嫌だが、勝者の権利を放棄する気はない。

 じっくり調べなくていいから、と言って手伝って貰う。

 ────といっても、何とか価値があるのは剣だけで、所持硬貨は合計で銀貨34枚と銅貨51枚だった。
 チンピラパーティの保有資産に、預け金があればそこから取り立てることは出来るそうなので、後でやってみよう。




 この五人の死体を従魔に食べさせれば、大幅にパワーアップしそうだが、それは止めておく。傍から見た感じが良くない、ということもあるが────
 なりふり構わずに強くなる道を選べば、歯止めが効かなくなるような気がする。


 この世界では人を殺しても、逮捕されるようなことは無い。
 自分で自分を戒めなければ、強くなる目的で大量殺人とかをやり出しかねない。
 
 ────いや、流石にそんなことは、しないだろうが……。
 ……念のためだ。




 俺はチンピラ五人の死体を放置して、フジインの手前まで歩いていく。


「わ、私を仲間にするわよね?──でも、私と付き合う以上、浮気は許さないわ! 他の奴ら、あの女たちはパーティを首にして!! そうだわ、あいつらを奴隷商に売れば良いのよ。それでお金を作りましょう!!」

 …………。
 俺は無言で、フジインの顔面に拳をめり込ませた。






 俺は殴ってから、しまったと思った。

「こいつから、金を引き出す予定だったのに──」

 パーティの隠し財産とかが、あるかもしれない。


「別にいいんじゃないの? お金はまだ沢山あるんだし」
「そこそこお金も回収できたし、もういいんじゃない?」
「……この人に時間を割くよりも、他のことを、しましょう」
「仲間集め、ですね」
「お腹すいた──」

 女性陣からは、別に構わないという意見が多い。
 山賊を討伐した報奨金も入ったことだし、気にすることもないか。




 俺はフジインを縄で縛り、冒険者ギルドへと入る。
 中を見渡すと、あの態度の悪い受付が、機嫌の悪いむすっとした顔で座っている。

「おい、仲間募集の、応募者の情報を見せろ」

 受付の中年女は、書類を一枚カウンターに叩きつけて出してきた。
 

 書類を確認すると、三名の名前と連絡方法が書かれている。

 ギルドへの仲介費用と必要経費分は、前払いで支払い済みだ。
 後は追加費用の紙の代金、銀貨一枚を支払う。

 それから──
 俺は中年女の頭をガシッと掴んで、カウンターに叩きつけた。

 ドゴっ!
 ──という、いい音がした。
 



 中年女の顔面にダメージを与えた後で、俺はそいつの首を掴んで締上げ──
 
「────あんまり舐めた態度、取ってると、ぶち殺すぞッ!!」


 軽く脅しつけておく。
 冒険者ギルドと揉め事は起こしたくはないが、俺もパーティを率いるリーダーだ。

 荒事が日常茶飯事の冒険者稼業──
 舐められるわけにはいかない。
 

 先ほどのチンピラとの争いの前にも、こいつは妙な動きをしていた。
 確証などないが、こいつが裏で手を引いていたのではないかと、俺は見ている。

 ──何故そんなことをするのか?

 動機は?
 こいつにとっては何の得もないだろうが、自分が気に入らない相手に手間をかけてでも、嫌がらせをする人間はどこにでもいるものだ。

 とりあえず、態度の悪さを理由にシメておいたが、これ以上は流石にやり過ぎになる。──適当なところで手を放して、冒険者ギルドを後にした。

 ギルド職員に暴行を加えたという事で、貢献ポイントが50減らされた。
 まあ、それくらいならいいか──

 この街に来て、一週間──
 実戦を兼ねた戦闘訓練で、そのくらいは稼いでいる。

 その後で別のギルド職員と話をして、未払い金の回収代行を提案された。

 こういった事は、たまにあるらしい。

 
 俺は冒険者ギルドに金の回収を依頼した。

 手数料は取られてしまうが、これ以上、この不愉快な女にかかわりたくは無かった。 

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