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冒険者編
第57話 初心者狩り B
しおりを挟む剣を素早く引き抜き、次の獲物に狙いを定める。
次のターゲットは、俺の左側にいる奴にする。
チンピラの中で一番身体のデカイ奴で、戦闘能力も一番高い。
まあ、俺から見たら目くそ鼻くそレベルの違いしかないが、敵チームにとっては戦力の中心、精神的支柱のキャラだろう。
そいつを叩く。
俺は魔法で石つぶてを一つ作ってから、道に落ちている石を拾う振りをする。
敵の顔面を貫通するイメージで腕を軽く振り、投げ飛ばす。
石は狙い通りに、チンピラBの頭蓋骨を貫く。
チンピラBは、ドサッ、と地面に倒れた。
わざわざ石を拾って投げたように見せたのは、魔法を使えることを隠すためだ。
ギャラリーも結構いる。
手の内はあまり、見せないほうがいい。
──どの程度、誤魔化せたかは判らないが、やらないよりはいいだろう。
敵チームは想定外の事態に、どうすれば良いのか判らずにオロオロしている。
そんな敵の状態など、知ったことでは無い。
次は連中の中心にいた、チンピラリーダー。
──チンピラCだ。
俺は走って詰め寄り、その勢いのまま上段から振り下ろした剣で、チンピラCの肩から腕を切断する。
これでチンピラCは、再起不能だ。
チンピラたちは半円を描くように、俺を囲んでいた。
残りは、円の左側に居た二人だ。
俺がそちらを向くと、目が合ったチンピラDは、後ろを向いて逃げ出そうたした。
俺はそいつが逃げ出す前に、背中を切りつけた。
チンピラDは、地面に倒れ込む。
「──逃がすかよ」
黙って逃げた奴を見逃すと、俺が取り逃がしたみたいになるからな。
きっちり始末した。
逃げたいなら、ちゃんと俺と話を付けてから逃げろよ。
最後の一人となったチンピラEの方を見ると、そいつはビクッと震えたかと思うと、突然大声で意味不明なことを叫び出した。
「お前のせいで、お前なんかに、うぅ……お前さえいなければぁ、ぼ、冒険者を舐めるな!! ふ、フジインは俺が守る!!」
なんだかよく分からないが、ムカついたのでそいつの口を剣で斬って、喋れなくしてから、両手首を切り落としてやった。
苦しんで、死ね。
リーダーを倒したところで勝負はついたんだ。
ちゃんと謝れば、最後の二人くらいは、生かしてやっても良かったが──
黙って逃げようとした奴は、後から逆恨みしてきそうだった。
弱いくせに無駄に楯突いてくる奴は、単純に嫌いだ。
──だから殺した。
まあ、どうでもいいか。
もう終わったことだ。
これで取り敢えず、一段落ついた。
俺は遠巻きに観戦していた、フジインという女の方を見た。
「ヒィィ、ち、違うのよ。わ、わたしは……そいつらに脅されて、無理やり仲間にされたの!!! 嫌だったけど、仕方なく──そ、そうだわ!! あんた、仲間を募集しているんでしょ。お、女の、私が仲間になってあげるわ!!!」
…………。
──こいつらは、こっちの情報をある程度、把握している。
喧嘩を売る相手は、誰でもよかったわけではなく──
俺を狙ってきたわけだ。
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