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冒険者編

第56話 初心者冒険者

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 馬車の周囲には、俺と同い年くらいの六人組がいた。

 そいつらは、剣を抜いている。
 剣を構えているのは、五人の少年だ。

 その剣は、ウル助とウル坊に向けられていた。
 六人組は男五人と女一人の構成で、女は地面にへたり込んでいる。

 スラ太郎は馬車の中で、我関せずとじっとしている。



「俺の従魔に何をしている? ──なんだ、お前らは?」

 俺はそいつらに声を掛けながら、腰に差してある剣を抜く。

「この魔物たちが、フジインを、いきなり襲ったんだ。成敗してやる!!」



 連中の一人が若干の棒読みで、理由を説明する。
 『フジイン』とやらは、座り込んでいる少女のことだろう。 

 …………なるほど。

「まあ、なんだ……因縁を付けられているのは分かった。で、これからどうしたいんだ。お前らは──?」

 俺は、連中に問いかけてやる。

 こういうのは、ちょっと楽しみなんだ。
 付き合ってやろう。

「お前が飼い主か? まずはフジインに謝罪して貰おうか? そして治療代として回復薬分の金貨、十枚を賠償しろ!!」


 リーダーらしき男が、要求を突き付けてくる。

 冒険者ギルド内の売店や薬屋で見て驚いたが、回復薬は値段が高い。
 どこでも最低、金貨十枚はする。
 品質が悪くても、金貨十枚。

 国が最低販売価格を、その値段に決めているらしい。

 国が決めた以上、このラムダドーラ王国では回復薬はその値段になる。
 貴族や王族と言った権力者は、平民出身の冒険者が力を付けるのを快く思わない。

 育ちにくいように、回復薬を高額に設定して買いにくくしているのだろう。 



 まあ、それはともかくとして、チンピラに対する俺の答えは決まっている。
 喧嘩がしたいなら、買ってやる。

「断る。──鬱陶しいから、さっさと失せろ」


「お前、新入りだろ。見ない顔だ……こういう場合の冒険者のルールは知ってるか? お互いに納得できる条件の下で、決闘して決着をつけるんだ」


 チンピラたちのリーダーらしき男が、本題に入った。
 俺は勿論、受けて立つ。

「──あぁ、喧嘩がしたいのか? まあいいぞ、遊んでやる。で、決闘のルールは? お前ら六人を倒せばいいのか?」



「粋がってんじゃねーぞ、新入り!! やるのはフジイン以外の俺達五人だ。そっちはまさか──女に戦わせたりは、しねーよなぁ?」

 なるほど、男だけで戦うとなれば、奴らは五対一の状況を作れる。
 いい挑発だ。
 ──乗ってやる。


「ああ、こっちは俺一人で良い──で、他に条件は?」

「俺たちが勝てば金貨十枚と、お前の謝罪だ」

 ふーん、まあそれで良いか──


「じゃあ、俺が勝てば金貨五十枚よこせ。五対一なんだから文句はねーよな? ああ、いや……その前に、お前ら、それだけの金はあるのか?」

 奴らの装備は、あまり上等なものではない。
 とても、金貨五十枚の貯えがあるようには見えない。



「ふんっ、そういう手で来るか。こっちが金貨五十枚を用意できなきゃ、逃げれると踏んだか──だがな」

 チンピラのリーダーは小馬鹿にするような笑みを浮かべて、得意げに話し続ける。

「残念だったな。俺たちが負ければ、俺たちを奴隷商人にでも売って、金を作ればいい。金を作るには、そういう手もあるんだ。さあ、これで逃げ道は無くなったぞ!」

 どうやらあいつらは、俺に負けた時のことは何も考えていないらしい。


 いいぜ。

 やってやる。
 ……なんだか今は、好戦的な気分なんだ。

 態度の悪い受付に、ムカついている。


 それでかな?
 
 目の前のコイツらを、蹂躙してやりたい気分になったのは……。
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