93 / 95
冒険者編
第56話 初心者冒険者
しおりを挟む馬車の周囲には、俺と同い年くらいの六人組がいた。
そいつらは、剣を抜いている。
剣を構えているのは、五人の少年だ。
その剣は、ウル助とウル坊に向けられていた。
六人組は男五人と女一人の構成で、女は地面にへたり込んでいる。
スラ太郎は馬車の中で、我関せずとじっとしている。
「俺の従魔に何をしている? ──なんだ、お前らは?」
俺はそいつらに声を掛けながら、腰に差してある剣を抜く。
「この魔物たちが、フジインを、いきなり襲ったんだ。成敗してやる!!」
連中の一人が若干の棒読みで、理由を説明する。
『フジイン』とやらは、座り込んでいる少女のことだろう。
…………なるほど。
「まあ、なんだ……因縁を付けられているのは分かった。で、これからどうしたいんだ。お前らは──?」
俺は、連中に問いかけてやる。
こういうのは、ちょっと楽しみなんだ。
付き合ってやろう。
「お前が飼い主か? まずはフジインに謝罪して貰おうか? そして治療代として回復薬分の金貨、十枚を賠償しろ!!」
リーダーらしき男が、要求を突き付けてくる。
冒険者ギルド内の売店や薬屋で見て驚いたが、回復薬は値段が高い。
どこでも最低、金貨十枚はする。
品質が悪くても、金貨十枚。
国が最低販売価格を、その値段に決めているらしい。
国が決めた以上、このラムダドーラ王国では回復薬はその値段になる。
貴族や王族と言った権力者は、平民出身の冒険者が力を付けるのを快く思わない。
育ちにくいように、回復薬を高額に設定して買いにくくしているのだろう。
まあ、それはともかくとして、チンピラに対する俺の答えは決まっている。
喧嘩がしたいなら、買ってやる。
「断る。──鬱陶しいから、さっさと失せろ」
「お前、新入りだろ。見ない顔だ……こういう場合の冒険者のルールは知ってるか? お互いに納得できる条件の下で、決闘して決着をつけるんだ」
チンピラたちのリーダーらしき男が、本題に入った。
俺は勿論、受けて立つ。
「──あぁ、喧嘩がしたいのか? まあいいぞ、遊んでやる。で、決闘のルールは? お前ら六人を倒せばいいのか?」
「粋がってんじゃねーぞ、新入り!! やるのはフジイン以外の俺達五人だ。そっちはまさか──女に戦わせたりは、しねーよなぁ?」
なるほど、男だけで戦うとなれば、奴らは五対一の状況を作れる。
いい挑発だ。
──乗ってやる。
「ああ、こっちは俺一人で良い──で、他に条件は?」
「俺たちが勝てば金貨十枚と、お前の謝罪だ」
ふーん、まあそれで良いか──
「じゃあ、俺が勝てば金貨五十枚よこせ。五対一なんだから文句はねーよな? ああ、いや……その前に、お前ら、それだけの金はあるのか?」
奴らの装備は、あまり上等なものではない。
とても、金貨五十枚の貯えがあるようには見えない。
「ふんっ、そういう手で来るか。こっちが金貨五十枚を用意できなきゃ、逃げれると踏んだか──だがな」
チンピラのリーダーは小馬鹿にするような笑みを浮かべて、得意げに話し続ける。
「残念だったな。俺たちが負ければ、俺たちを奴隷商人にでも売って、金を作ればいい。金を作るには、そういう手もあるんだ。さあ、これで逃げ道は無くなったぞ!」
どうやらあいつらは、俺に負けた時のことは何も考えていないらしい。
いいぜ。
やってやる。
……なんだか今は、好戦的な気分なんだ。
態度の悪い受付に、ムカついている。
それでかな?
目の前のコイツらを、蹂躙してやりたい気分になったのは……。
7
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国
てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』
女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる