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冒険者編
第54話 仲間の募集 B
しおりを挟む一通りやることを済ませた俺たちは、壁外地区の北を目指す。
たぶん応募者は無いと思うが、一週間後に仲間募集の張り紙の結果が出る。
その待ち時間に戦闘訓練もかねて、イーステッドの第一領域で魔物狩りをしようという事になった。
というわけで、俺たちは壁外地区の北方面に来ている。
イーステッドの壁外地区経験者のレイレルに聞いたところ、家出してきたような初心者冒険者は、教会の世話になることが多い。
似たような境遇の奴が、寄り集まって共同生活をする。
俺たちは初心者だが、金があるので独自に動ける。
拠点を決めて、野宿しながら魔物を狩る。
まずは冒険者ギルドの系列の不動産屋に、野宿用のスペースをレンタルで借りる。
俺たちが借りたのは、コの字に建てられた壁とその中のスペースだ。
魔物の襲撃に備えて、同じような壁が壁外地区の外周には沢山ある。
そこをキャンプスペースとして、不動産屋が貸し出しているわけだ。
ここなら馬車ごと泊まれるし、魔物を狩りに行くのにも便利だ。
規模の大きいパーティだと、宿とは別に借りることもあるらしい。
料金は一か月で、銀貨五枚。
駐車スペースを、月五千円で借りるようなものだ。
魔物の解体や焚火や料理など、好きに使っていいそうだ。
魔物や犯罪者が出る危険も高いので、寝るときは見張りを立てるように言われた。
水はギルド所有の井戸から、有料で汲んでくることが出来る。
特に割引は無いので、他で買いたければ好きにすればいいと言っていた。
俺は自分のスキルで出せるから、水には困らない。
俺たちは借りたスペースに馬車を止めて、周囲の確認作業をする。
壁は対魔物用の防壁として作られているだけあって分厚く、頑丈にできている。
風よけにもなって、役に立つ。
前にここを使っていた奴らの、置き土産があった。
スラ太郎に処理して貰う。
ちゃんと埋めておけよと思ったが、レンタル期間が終了間際なら、わざわざ手間はかけないか──
俺たちのパーティはスラ太郎がいるから、汚物の処理に手間はかからない。
特に女性陣から、スラ太郎は重宝されている。
旅の間は不思議と排泄はほとんどしないが、腹を壊した時などにはスラ太郎は必須と言ってもいい。
排泄などの痕跡を残していけば、魔物や盗賊に付け狙われる危険もある。
周囲のスペースに、チラホラと人がいる。
残っているのは、留守番要員だろう。
防犯にも気を付けなければいけない。
馬車は悪路を進む場合、乗り心地は最悪で人が乗れるものではない。
俺たちの荷馬車は頑丈だが、乗り心地はかなり悪い。
舗装された道でも、ガタガタ振動が来る。
そのため荷物運び用と、割り切って利用している。
荷物の保管場所として使っているので、旅の間にかなり強度を上げてある。
山賊から大量に手に入れたシミターを材料に、鉄でコーティングしてある。
入口に鍵も付けたので、簡単には中の物を盗めないだろう。
だが時間を掛ければ、鍵開けも馬車の破壊もできる。
馬を盗まれるリスクも考えれば、見張りは常につける必要がある。
俺以外の八人でチームを二つ作り、留守番と戦闘訓練を交互に行った。
肉は大兎を一匹狩れば、十分な量が手に入る。
塩や胡椒、旅の間で手に入れた香草やハーブで、適当に味付けをして食べる。
かなり美味しかった。
キャンプで食べる食事は、二割増しで旨くなる。
──特にトラブルもなく、一週間が経過した。
「そろそろ、結果を見に行くか……」
仲間募集の結果は、もう出ているだろう。
俺たちはキャンプ地を一旦引き払い、冒険者ギルドへと移動する。
受付に居たのは、前にも居た態度の悪いBBAだった。
運が悪い。
だが、出直すのも手間だ。
我慢するか──
俺達は、受付で結果を聞く。
パーティ加入希望者は、三名いたそうだ。
…………。
頭、大丈夫かよ。
そいつら。
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