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冒険者編

第53話 山賊の懸賞金 A

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 『冒険者の町』と呼ばれるイーステッドは、このラムダドーラ王国のちょうど中央にある。
 新人冒険者が集まる街として知られているが、この国の二大都市の中央に位置することから、交易が盛んな都市でもある。

 イーステッドから見て西に旧王都ラムダールがあり、東には現王都ラムドラルスがある。そこから東にアルトレプス山脈が連なっており、ラムドラルスはこの大陸の国々の間では、極東とされている。




 現在工事中のアルトレプス山脈を貫通するトンネルが完成すれば、大陸の極東はさらに東の、チリーズ王国ということになるだろう。

 チリーズは海に面している国だ。

 そこと交易が行われるようになれば、海産物も輸入されるようになるし、塩の価格も下がってくれるかもしれないと、期待されている。

 俺達の暮らすラムダドーラ王国は、取るに足りない田舎の小国に過ぎないが、山脈を貫くトンネルが完成すれば、その位置づけにも変化があるだろう。




 この世界の都市は、まず中心となる街を作り、それを囲むように新たに町や村、農場を構築していく。
 そうすることで、女神の加護の効果エリアを重複させて、人の居住地として利用できるエリアを、より広く確保するようにしている。


 しかし、このイーステッドには、中央を囲む周辺の町は存在しない。

 元々ここは、西から東へと開拓を進めるための足掛かり──
 そんな位置づけの街だった。

 そのため当時の為政者が街の発展には熱心でなかったのと、魔物狩りを行う上で、周辺に町を作らない方が利便性が良いというメリットもあったので、女神の加護の無い壁外地区が拡大される形で、独自に発展していった。


 イーステッドの壁外地区は、北側が平民出身の冒険者が多く住み、南側は貴族階級の騎士や傘下の兵士が暮らすエリアになっている。

 取り決めたわけではないが、自然とそう別れていったらしい。




 俺が目指すのは北側の、平民エリアだ。

 イーステッドの壁外地区は、サイザルと比べるとかなり大きい。
 北に向かって、縦長に伸びている。

 壁外地区の一等地は門の周囲で、北に行くほど治安と建築物は悪くなる。





「さて、まずは拠点を決めないとな」
 
「お金もたくさん手に入ったんだし、いい宿に泊まりましょうよ」

 山賊を討伐した時に手に入れた金と、それとは別に冒険者ギルドからも報奨金が貰えるらしいので、スタートしたばかりなのに金は潤沢にある。

 アカネルの意見は妥当なものだし、他の皆も概ね同意している。
 だが──

「いや、俺は初心者らしく、底辺からスタートしたいんだよ」

「──は? 馬鹿なんじゃないの?」


 ……やはり、俺のこだわりは理解されないか──
 旅行でも体験型が人気だったりするじゃないか、俺は前世で碌に旅行なんてしてないけど──

 せっかく、異世界転生したんだ。

 いろんな体験をしてみたい。


 …………。
 このパーティのリーダーは俺だ。

 俺が方針を決める。

 俺が自分の意見に固執していると── 


「取り敢えず冒険者ギルドに行きましょう。ギルドカードの更新や、私達のパーティ登録もあるし──」
 レイレルが仲裁するような、提案を出してくれた。

 ──そうだな。
 まずは冒険者ギルドだ。

 この世界では口約束も有効で、ちゃんとステータス情報に反映される。

 だから、レイレルとラズとリズは、もうすでに俺のパーティの正式メンバーだ。 
 だが、冒険者ギルドに登録していないと、その情報はギルドシステムには反映されない。

 この辺りは少しややこしいので、冒険者はこまめに冒険者ギルドに顔を出して、情報を更新したほうが良い。
 ──くらいに、把握しておけばいい。

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