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冒険者編

第47話 小鬼族の集落 2 A

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 さて、食事も食べ終わった。
 本日の宴の、メインイベントが始まろうとしている。

 捕まえた山賊の処刑である。

 俺達が食事をしていたのは、小鬼族の村の広場だ。
 その広場の中央で、処刑は行われる。
 
 山賊は柱のような太い木に、括られて放置されていた。
 山賊の足元には、木の枝を乾燥させた薪が山盛りに置かれている。


 小鬼族の族長が、キャンプファイヤーの焚火から火のついた枝を取り出して、山賊の方へと歩いていく。
 そして、山賊の罪状を言い立ててから、足元の薪へと火をつける。


 それと同時に、小鬼族たちの歓声が、広場に溢れかえった。

 山賊という脅威が消え去った喜びの歓声と、自分たちを苦しめてきた山賊への罵声。
 大盛り上がりだった。
 
 これで、この小鬼族の村の、山賊事件は終わりを迎えた。




 その夜は、小鬼族の村に泊まらせて貰うことになった。
 今日の寝床は、ラズとリズが暮らしていた家だ。

 全員が寝るには少し狭かったが、屋根のある所で横になれるだけありがたい。

 俺は念のために回復薬を摂取して夜は寝ずに過ごす、明け方に他を起こしてから、少し眠ることにした。
 俺が寝ずの番をしていると、レイレルが話があると言って声をかけてきた。

「……あの、ユージ。私のこと正式にパーティに入れて欲しいの……」

「ああ、いいぞ。こっちとしても助かるし、歓迎するよ」

「本当!! 良かった」

 俺が彼女の申し出を承諾すると、心底ほっとしている。





 レイレルと一緒に冒険者をしていた幼馴染の男の子は、山賊に殺されている。

 彼女は、山賊から解放されても一人きりだ。
 実家に帰ろうにも、家出同然で冒険者になったので、今更帰れない。

 山賊のアジトを出発して、山道を登っている間は──
 この先、どうやって生きていこうかと悩み続けていた。

 そんな時に、俺の戦いぶりを見た。


 ウォー・ウルフの群れとの戦闘だ。

 群れのボスは進化個体で、しかも魔法を身に纏う特殊タイプだった。

 あんなのはシルバーランクの冒険者だって、全滅覚悟で戦う相手だ。

 あの魔物を見た瞬間に、自分はここで死ぬと思ったそうだ。
 それをあんなに、あっさり倒した。
 
 その時に、自分の身を俺に預けたいと思ったそうだ。



 強いパーティは、正式メンバーを選りすぐる。
 弱い奴や、女をパーティに加入させる目的は、弾避けや使い捨て、もしくは身体目当て──

 強いパーティを避けて、弱小パーティに入った場合──
 基本は、雑用任務。
 そこでも、使い捨てに利用されたり、身体を要求される場合もある。

 どうにも暗い未来しか想像できない。





「俺も身体目当てというか、エッチな目で見ることはあるぞ──」

 そこは隠さずに正直に言う。

「ああ、それは、アカネル達に聞いてるから、なんとなく覚悟はしてる。見てもいいよ。──それに、男の子ってそういうものだって分かってるし……」

 レイレルは顔を赤らめながら、そう言った。

 だったら何も問題はない。


 レイレルは、俺のパーティ『白銀の竜の翼』の正式なメンバーだ。


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