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冒険者編

第39話 山賊が現れた 3 B

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 なるほど──
 春になったとはいえ、日が落ちれば、まだ冷える。
 それに加えて、近くに山賊がいるという恐怖と緊張感もあって、尿意を催して──

 いざ、放出しようとしたところに、山賊がやって来たわけだ。

 二人は、言いよどんでいたが──
 二人とも山賊にシミターを突き付けられて、漏らしてしまったようだ。

 ズボンを脱いだ状態で洩れたのは、むしろ運が良かった。


 最初に見つけたあの一団以外にも、山賊はまだいるようだ。


 俺は先ほど倒した、三人の山賊が来たという方向を見る。

 よく見ると山の中に、草木の生えていない道がある。
 人が頻繁に歩いて、出来た道だろう。


 恐らくその奥に、山賊達の根城があるはずだ。

 「ユージ、いるか?」

 山賊から救出した小鬼族の、ラズとリズがやって来た。





 俺は地面に落ちていた山賊の松明を拾って、アカネルに手渡す。


「──ああ、こっちだ」

 俺は仲間五人に、ラズとリズのことを紹介した。

 そして、山賊達の動向を共有して整理することにする。


 辺りはもう真っ暗だし、山の中で障害物も多い。

 この辺りは山賊の通り道の可能性が高いので、山道の少し外れたところに移動して話をすることにした。




 ラズとリズの暮らしていた小鬼族の村が、人間の山賊達に襲撃された。
 小鬼族は交戦して抵抗したが、山賊には敵わなかった。

 戦闘が数日間続き、自分達では山賊に勝てない──
 そう村人たちが思い知ったタイミングで、山賊達から提案があった。
 
「大人しく生贄を差し出すなら、この村から手を引いてやる」


 山賊の要求は、小鬼族の子供二人──
 村人の間では、賛否両論あった。
 従うか、戦うか──

 大人たちの話し合いを聞いていたラズとリズの二人が── 
 このまま全滅するよりはと、生贄に志願したのだそうだ。

 二人の親は山賊との戦闘で戦死していて、この先、自分たちは村のお荷物になる。
 そう考えて、決断したそうだ。

 村の中で話がまとまり、山賊に白旗を上げて、要求を受け入れると知らせて──
 馬車に乗せられ、移動していたところを、俺に助けられた。

 ──という流れのようだ。




「山賊は後、何人いるか分かるか?」
「正確には解らない。けれど山賊の親分は、まだ死んでない──」

 ラズとリズによると山賊の中で、特に強かったのは親分だ。
 その次に厄介だったのは、魔法使い。

 それ以外にも何人か手練れがいたが、そいつらは敵わない程ではなかったそうだ。



 話を整理してみると、このままラズとリズを村へ送り届けて──
 『めでたしめでたし』、とは行かないようだ。


 山賊の数はかなり削ったが、親分とやらがまだ残っている。

 そいつを始末しなければ、この事件は解決とはならない。
 首を突っ込んだ以上は、そこまでするのが筋だろう。

 俺は山賊の、残党狩りをすると決めた。
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