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冒険者編
第36話 ベテラン冒険者 A
しおりを挟むサイザルの町での冒険者生活、四日目。
この日もそれまでと変わらずに、サリシアとナーズは解体作業に、俺たちは平原へと兎狩りに出かけたのだが、冒険者ギルドで荷車を借りてからここまで、別の冒険者パーティが俺たちを付けてきている。
そいつらは、三十歳を超えるくらいの年齢で構成された六人組だ。
装備はそこそこ揃っていて、使い込まれて年季もある。
低ランクのベテランチーム、といった感じだ。
俺たちは、この町の周囲で大金を稼げる獲物を、短期間に複数仕留めている。
それは目立つし、噂になるだろう。
ゴブリンやスライムは、大した金にはならない。
低ランク冒険者が狙うのは、大兎だ。
何らかの方法で大兎を効率的に狩っているチームがいれば、あやかりたくなるのが人情だ。
あいつらは、俺たちの後をつけて、横取りでもする気なんだろう。
アカネルが、後ろを気にしながら──
「なんかムカつくわね。私が文句言ってきてやるわ」
相変わらず、好戦的な性格だ。
見知らぬ他人に対して、物怖じしない、その性格はちょっと羨ましい。
イルギットも──
私も行くわ、と言って乗っかろうとしている。
さて、どうするか──
とりあえず、俺は二人を止めておいた。
冒険者同士の暗黙の了解として、他の冒険者のいる狩場にはなるべく近づかない様に、というのはある。
俺達をつけ回すあいつらは、明らかにマナー違反だが──
あくまでマナーが悪いというレベルで、明確に犯罪行為をしているわけではない。
わざわざこちらから、喧嘩を売るほどではないと判断した。
かといって、あいつらを大兎の所まで案内してやる義理もない。
今日の兎狩りは中止にして、ゴブリン相手の実践訓練に切り替えた。
資金はすでに結構稼げているので、これ以上、がっつく気もない。
俺たちはゴブリンに狙いを変更して、戦闘訓練を行う。
二匹組のゴブリンと、二対一で戦う訓練だ。
アカネル、モミジリ、イルギットの順で、それぞれ戦わせる。
相手との間合いを上手く取って、なるべく一対一の状況になるように立ち回って、戦闘するよう指導する。
三人の防具は、俺と同じでフルアーマーではない。
敵の攻撃を避け切れずに受けるときは、防具で守られている箇所で、受けるように意識させる。
三人とも、二対一の戦闘を無難にこなせた。
後は町に帰って、サリシアとナーズと合流して、六人で模擬戦でもしようかと思うのだが──
俺たちのことを、あの六人組がまだつけ回してきている。
近寄っては来ないが、遠くから見ている。
いい加減、ウザくなってきた。
まあ、今日一日張り付いて、何の収穫もナシだ。
あいつらも、これ以上は粘着しなくなるだろう。
そう考えて無視することに決め、町へと帰還しようとすると──
六人組が、俺達の行く手に立ち塞がった。
こうなるともう、無視するわけにもいかない。
マナー違反の範疇を超えている。
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