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冒険者編
第34話 冒険者始めました B
しおりを挟む冒険者ギルドの、モンスター解体作業用の建物にたどり着き、大兎一匹の買取査定を受ける。
提示された買い取り額は、一匹で金貨十五枚。
獲物の状態が良かったので、高額だった。
「一匹で金貨十五枚、日本円にすると15万ってところか──」
「これで十五万、凄い稼げるじゃない!!」
「これなら、生活には困らないね」
俺もなんか、結構簡単だなとか、そんなふうに思ったが──
それはちょっと、考えが甘いだろう。
俺が広域探知で、目当ての獲物を見つけることが出来た。
それ以外の、金にならない魔物との戦闘を回避できた。
そして、一撃で敵を仕留める強さがある。
これだけの条件が揃っているから、効率よく稼げたんだ。
二人にそのあたりを、ちゃんと説明する。
俺がパーティのリーダーなんだから、しっかりしないとな。
後で冒険者ギルドの職員に聞いたところ──
他の一般的な五人チームの冒険者だと、大兎一匹狩るのに平均で三日はかかる。
探すのが大変だし、囮役が大怪我を負いやすい。
──とのことだった。
簡単に金儲けできると、勘違いするのは良くない。
この後は、魔物の解体作業の補助をしていた二人と合流して、六人で解体作業の補助を行う。
さっき俺たちが狩って、持ってきた大兎の解体だ。
今までは自分で適当にやっていたが、皮のはぎ方や肉の旨い部位などを、解体専門の作業員の仕事を手伝いながら学習する。
解体補助が終了した後で、冒険者ギルドに依頼完了の報告に行く。
依頼の報告は受付にある魔道具に、ギルドカードを接触させるだけで終わる。
解体作業補助の報酬は、六人で銀貨十三枚だった。
一人分だと半日で、二千円くらいか?
いや、俺たち四人は後から入ったから、もう少し多いくらいだろう。
俺の冒険者パーティ『白銀の竜の翼』のギルド貢献度はモンスター討伐で17ポイント、解体作業の補助で3ポイント上がった。
1500ポイント溜めればアイアンランクに昇格できるので、とりあえずはそれを目標にしている。
昼過ぎから、剣の稽古を始める。
場所は町の中に適当な場所が無かったので、町を出て少しした平原で行った。
サリシアとナーズは、短剣で素振り。
アカネルとモミジリとイルギットは、大兎との実戦を想定した俺との模擬戦。
大兎役の俺が、槍を構えて突進する。
それをかわして、木の棒で俺を切りつける。
これをくり返した。
俺自身、独学で剣を振るっているので、訓練として正解かは判らない。
途中でゴブリンが三匹近づいてきたので、俺が剣で二匹を始末する。
アカネルとモミジリに、残った一匹と戦わせてみる。
二人は初めて人型の魔物と、剣を持って殺し合いをする。
転生者の二人は、怖気づくか冷静さを失ってしまうのでは、と懸念したが杞憂だった。
モミジリは若干尻込みしていたが、自分を殺そうと襲ってくる魔物に対して、適度な闘争心を持って戦えていた。
これなら、この先も問題ないだろう。
俺たちはゴブリンから魔石を取り出して、サイザルの町へと帰還する。
ゴブリンは冒険者ギルドに持っていっても、魔石以外に価値はなく、他は捨てるので大した値にはならない。持ち帰る意味はない。
解体依頼費用で、かえって赤字になることもある。
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