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農場奴隷編
第24話 ☆農場主の娘 B
しおりを挟むイルギットは俺に向かって剣を振りかぶりながら距離を詰め、絶妙なタイミングで斬り下ろしてきた。
予想よりも早く綺麗な動きだが、俺は余裕をもって左に躱す。
躱した俺を狙って、イルギットは剣を横薙ぎに振るうが──
その時にはすでに俺は後ろに下がって、間合いの外にいる。
相手の動きを空間探知で正確に読み取り、攻撃を先読みして躱していく。
イルギットは農場主の娘として剣術の訓練を積んできたのだろうが、一人で魔物と戦い続けた俺とは、戦闘経験の質も量も違い過ぎた。
イルギットがどれだけ攻撃を繰り出しても、俺はそのすべてを紙一重で躱す。
十分ほどそうしていただろうか、イルギットは体力は限界を超えて汗だくになり、肩で息をするようになった。
そろそろ頃合いと見た俺は、イルギットの攻撃時にこちらから間合いを詰めて、手首を掴んで足を払い押し倒した。
俺は倒れたイルギットの上にそのまま乗って、両手首を掴んで押さえつける。
「俺の勝ちだ──」
「くっ……」
悔しそうに、顔を背けるイルギット。
俺はイルギットが身に着けている、鎧に手を伸ばす──
だが、彼女はまだ負けを認められないようで、激しく抵抗してくる。
……いいだろう。
とことん付き合ってやる。
俺は彼女を解放し、再び戦いを始めた。
…………。
……。
チュンチュン、と雀が鳴いている。
俺は農場の小高い丘の上にある、領主の館へ続く林の中で目を覚ました。
昨日はイルギットと決闘を行うことになり、俺が勝利した。
戦いに勝った爽やかな朝だ。
「おい、そろそろ起きろ」
俺は隣で寝ているイルギットの頬を、ぺちぺちと叩いて起こしてやる。
昨日、戦い疲れて、途中で寝てしまったのだ。
「ん、んぅう──はっ! …………あ、ああっ!」
「よう、おはよう。いい朝だな」
「──お、おはよう。そ、その、あの……き、昨日は……」
「もう、一緒に死のうとか言うなよ」
こいつを宥める為に、昨日の夜、嫁に貰ってやると約束したのだ。
「い、言わないわよっ、で、でもどうするのよ。これから──」
「ノープランだ。────嫁にしてやるというのは、勢いで言った」
「カッコつけて、無責任なこと言わないでよ!」
「唐突に無理心中しようとした奴に、言われたくはないな。──で、これからのこと以前に……昨日から家に帰ってないけど、大丈夫か?」
「そ、それは平気だと思う。ここに来たのは訓練と夕食の後だし、これから帰って見つかっても……早起きして散歩してたことにすればいいわ!」
「そうか……じゃあ、とりあえず俺たちの関係は秘密にしておいて、将来のことはこれからゆっくり考えよう」
俺は問題の先送りを提案する。
「え、ええ。そうね」
どうにかイルギットと、話を付けることが出来た。
これから──か。
さて、どうしたものか──
借金を返し終わってから、こいつとあの二人を引き連れて駆け落ち、というのが無難なところだろうか。
「まあ、とりあえず家に戻れ」
俺はイルギットの尻を、パシンと叩いて行動を促す。
彼女は俺を一睨みしてから、慌てて家へと向かった。
そんなことがあってから、イルギットは暇を見つけては、俺に会いに来るようになった。俺の仲間として、アカネルとモミジリにも引き合わせた。
最初はお互いを威嚇し合っていたが、イルギットに二人の剣の稽古を任せてから徐々に打ち解けるようになってきた。
木の棒を三つ用意して、三人で剣の稽古をする時間を設ける。
素振りや筋トレなんかの基本トレーニングから入り、実戦形式の打ち合いをする。
模擬戦は経験者だけあって、最初はイルギットが圧倒していたが、しばらく練習を重ねると、二人ともいい勝負が出来るまでに成長した。
三人が剣の稽古をしている時間に、俺は農作業をしている。
その日はたまたま、俺の農作業の終わりと、三人の稽古の終わりが重なった。
俺は三人に稽古をつけてやることにした。
*************************
名前 ユージ
HP 112/112 MP 126/126 FP 114/114
幸運力
058~-011×2
スキル
空間移動 危険感知
所持品
魔石値 0035334
回復薬 6個
所有奴隷
アカネル モミジリ イルギット
借金 金貨24枚 銀貨3枚 銅貨90枚
才能
大魔導士の卵 戦神の欠片 強欲な器
職業
労働奴隷Lv16(従順-56) 農夫Lv13 薬草採取者Lv12
戦士Lv19 剣士Lv17 武闘家Lv16 弓使いLv13 槍使いLv14
魔法使いLv20 魔術師Lv17 魔物使いLv15
探索者Lv19 斥候Lv18 隠密Lv20 暗殺者Lv17
遊び人Lv26 ギャンブラーLv23 ハーレムマスターLv19
薬師Lv18 錬金術師Lv20 鍛冶師Lv20
*************************
季節は秋になっていた。
小麦が実って黄金に輝いている。
その景色を見ていると、将来は農場主になるのも悪くはないなぁ、と思えてくる。
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