29 / 97
農場奴隷編
第22話 西の森の魔法戦 B
しおりを挟む老人の顔の根が攻撃されたのを見て、花の上の赤い少女が、火の魔力を自分の周囲に集中させる。
そして自分の周囲に、巨大な炎の塊を作り出す。
それと──
ほぼ同時に、炎の塊は俺の目の前まで迫っていた。
回避は不可能。
バシュアッァァアァ──
俺はとっさに、周囲に展開しておいた水の魔法で敵の攻撃を相殺した。
炎と水の球がぶつかり合って、俺の周囲に水蒸気が立ち込め、視界を閉ざす──
残った水球をマンドレイクの魔力反応がある方へと飛ばし牽制しながら、隠密結界を展開してその場から十メートル先の右前方の木の陰へと移動した。
敵の攻撃魔法は、飛ばしたと思った次の瞬間に目の前にまで来ていた。
俺の魔法とは、速度が違い過ぎる。
「あいつの魔法の方が俺のよりも速い──撃った瞬間、俺に当たるような……」
魔法というのはイメージが重要だ。
魔法を覚えてから今日までの訓練で、魔法を飛ばすことには慣れてきたが、さらに速度を上げるには──
相手に直撃しているイメージで、魔法を使ってみるか……。
俺は自分の周囲に、先程と同じように三つの水の球体を作る。
標的は花の上の人形型のマンドレイク。
敵に直撃するイメージで水球を二つ飛ばす。
ドシュウウウゥゥウウ!!
魔力で作った水球は放った瞬間に、二発とも人形型の敵の身体の、右肩から顔と左足の付けのから、胴を吹き飛ばした。
とどめに最後の水球を、人形に向けて打ち込む。
根の盾によるガードは間に合わない。
合計三発の魔法攻撃を食らったマンドレイクの人型は、完全に沈黙した。
マンドレイク(花)を倒したので、魔力を水から土へと性質変化させる。
風属性はまだ習得していない。
ここからは敵と同じ、土属性で攻撃した方がいいだろう。
ここまでで、魔力をかなり消費してしまっている。
強力な魔法は、あと一発撃てるかどうかだ。
手に持っている魔術師の杖は異空間に仕舞って、はがねの剣を装備する。
「うおっ!!」
気付いた時には──
いつのまにかマンドレイクの根が、俺の周囲を包囲している。
俺を捕らえようと、襲い来るマンドレイクの根を切断していく。
数が多すぎて全てを防ぐことは出来ない。
いくつかの根が身体に絡みつかれた。
しまった。
こうなるのであれば、魔法属性は火にしておけばよかった。
属性の相性をだけを考えて、想像力が足りなかった。
空間移動を使って離脱するかと思案したが、止めておく。
あれは最後の手段。
奥の手に、すぐに頼る癖を付けたくない。
俺は魔力で、自身の力を強化する。
普段使っている身体強化よりも、さらに力を引き上げる。
力を上げすぎると、自分の身体も壊れるので耐えられるギリギリを狙う。
俺は上昇した筋力で、絡まり付いていたマンドレイクの根を強引に引き千切っていく。自分の身体も悲鳴を上げるが、今は無視だ。
身体の自由を取り戻した俺は、マンドレイクに向かってまっすぐに走る。
魔力の残りもあと僅か──
魔法攻撃も、敵に近いほど威力は強くなる。
次で勝負を決めるために、接近して高威力の魔法を叩き込む。
高速で接近する俺を、捕縛しようとマンドレイクは根を伸ばしてくる。
散発的な妨害を切断しつつ、俺は止まらずに走る。
スピードに乗ったままマンドレイクの十メートル手前まで近づくことに成功した。
その位置から、魔法で作った直径三十センチくらいの、魔法で作った岩石をマンドレイクに向かって打ち込む。
マンドレイクは自分の周囲の根をすべて、防御に回して備えるが──
ドオッゴッッォオオオオオオ!!!
俺の放った岩石はツタの防御をものともせずに、マンドレイク本体の太い根を貫通して大きな風穴を開ける。
「グゴオオオォオオォ……」
マンドレイクは断末魔の叫びをあげる。
俺は止めを刺すために、装備を槍に切り替えて闘気を込める。
マンドレイクに俺を攻撃する余力は、もうないようだ。
俺は敵の魔石の正確な位置を魔力探知で確認して、それを槍で貫いた。
ここまで隠れていたスラ太郎が、俺のそばに寄ってきた。
魔石を二つ回収してから、俺は農場へと帰った。
*************************
マンドレイク(根)の魔石 (土属性)
所有者 ユージ
魔石値 000325
*************************
*************************
マンドレイク(花)の魔石 (火属性)
所有者 ユージ
魔石値 000566
*************************
32
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国
てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』
女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる