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農場奴隷編

第22話 西の森の魔法戦 B

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 老人の顔の根が攻撃されたのを見て、花の上の赤い少女が、火の魔力を自分の周囲に集中させる。
 そして自分の周囲に、巨大な炎の塊を作り出す。
 それと──
 ほぼ同時に、炎の塊は俺の目の前まで迫っていた。

 回避は不可能。


 バシュアッァァアァ──

 俺はとっさに、周囲に展開しておいた水の魔法で敵の攻撃を相殺した。

 炎と水の球がぶつかり合って、俺の周囲に水蒸気が立ち込め、視界を閉ざす──

 残った水球をマンドレイクの魔力反応がある方へと飛ばし牽制しながら、隠密結界を展開してその場から十メートル先の右前方の木の陰へと移動した。



 敵の攻撃魔法は、飛ばしたと思った次の瞬間に目の前にまで来ていた。
 俺の魔法とは、速度が違い過ぎる。

「あいつの魔法の方が俺のよりも速い──撃った瞬間、俺に当たるような……」

 魔法というのはイメージが重要だ。

 魔法を覚えてから今日までの訓練で、魔法を飛ばすことには慣れてきたが、さらに速度を上げるには──
 相手に直撃しているイメージで、魔法を使ってみるか……。



 俺は自分の周囲に、先程と同じように三つの水の球体を作る。
 標的は花の上の人形型のマンドレイク。

 敵に直撃するイメージで水球を二つ飛ばす。

 ドシュウウウゥゥウウ!!

 魔力で作った水球は放った瞬間に、二発とも人形型の敵の身体の、右肩から顔と左足の付けのから、胴を吹き飛ばした。

 とどめに最後の水球を、人形に向けて打ち込む。

 根の盾によるガードは間に合わない。
 合計三発の魔法攻撃を食らったマンドレイクの人型は、完全に沈黙した。




 マンドレイク(花)を倒したので、魔力を水から土へと性質変化させる。
 風属性はまだ習得していない。
 ここからは敵と同じ、土属性で攻撃した方がいいだろう。


 ここまでで、魔力をかなり消費してしまっている。
 強力な魔法は、あと一発撃てるかどうかだ。

 手に持っている魔術師の杖は異空間に仕舞って、はがねの剣を装備する。



「うおっ!!」
 気付いた時には──
 いつのまにかマンドレイクの根が、俺の周囲を包囲している。

 俺を捕らえようと、襲い来るマンドレイクの根を切断していく。

 数が多すぎて全てを防ぐことは出来ない。
 いくつかの根が身体に絡みつかれた。

 しまった。
 こうなるのであれば、魔法属性は火にしておけばよかった。
 
 属性の相性をだけを考えて、想像力が足りなかった。
 空間移動を使って離脱するかと思案したが、止めておく。

 あれは最後の手段。
 奥の手に、すぐに頼る癖を付けたくない。




 俺は魔力で、自身の力を強化する。
 普段使っている身体強化よりも、さらに力を引き上げる。

 力を上げすぎると、自分の身体も壊れるので耐えられるギリギリを狙う。

 俺は上昇した筋力で、絡まり付いていたマンドレイクの根を強引に引き千切っていく。自分の身体も悲鳴を上げるが、今は無視だ。


 身体の自由を取り戻した俺は、マンドレイクに向かってまっすぐに走る。

 魔力の残りもあと僅か──
 魔法攻撃も、敵に近いほど威力は強くなる。
 次で勝負を決めるために、接近して高威力の魔法を叩き込む。

 高速で接近する俺を、捕縛しようとマンドレイクは根を伸ばしてくる。
 散発的な妨害を切断しつつ、俺は止まらずに走る。

 スピードに乗ったままマンドレイクの十メートル手前まで近づくことに成功した。
 その位置から、魔法で作った直径三十センチくらいの、魔法で作った岩石をマンドレイクに向かって打ち込む。



 マンドレイクは自分の周囲の根をすべて、防御に回して備えるが──

 ドオッゴッッォオオオオオオ!!!

 俺の放った岩石はツタの防御をものともせずに、マンドレイク本体の太い根を貫通して大きな風穴を開ける。

 「グゴオオオォオオォ……」

 マンドレイクは断末魔の叫びをあげる。
 俺は止めを刺すために、装備を槍に切り替えて闘気を込める。

 マンドレイクに俺を攻撃する余力は、もうないようだ。

 俺は敵の魔石の正確な位置を魔力探知で確認して、それを槍で貫いた。
 ここまで隠れていたスラ太郎が、俺のそばに寄ってきた。

 魔石を二つ回収してから、俺は農場へと帰った。

*************************
マンドレイク(根)の魔石 (土属性) 
所有者 ユージ
魔石値 000325
*************************

*************************
マンドレイク(花)の魔石 (火属性)
所有者 ユージ
魔石値 000566
*************************
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