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農場奴隷編
第21話 攻撃魔法 A
しおりを挟む昨日の戦いは、久々に命の危険を感じるものだった。
体の傷や疲労は完全に回復しているが、炎の魔法で損傷した装備は魔物素材と合成して修復しなければならない。
それに、攻撃魔法の習得にも時間を割きたい──
数日は魔物退治には出れないな。
今日は晴れていたので朝から農場の仕事をこなし、日が沈んでから自分の部屋に戻っている。
俺はずっと攻撃魔法を使ってみたいと思って、試行錯誤していた。
カッコいい! とか面白そう! というのが主な動機だが、強力な遠距離攻撃の手段が欲しいというのもある。
今まで使っていた魔法は補助や強化といった地味なものが多かった──。
ゲームに出てくるような攻撃魔法を使ってみたくて、自分の魔力を手のひらの上に集めて炎を出そうとイメージしてみたが、何も起こらない。
魔力を認識できるし、操作もできる。
だが、炎は創れない。
そこで行き詰っていた。
しかし昨日の戦いで、実際に炎の攻撃魔法を使う様子を見ることが出来た。
俺の見たところ傀儡の魔術師が炎の魔法を使う手順は、半透明な自身の魔力を赤い色に変化させ、その魔力を炎へと具現化していた。
変化と具現化。
その手順を同じように辿れば、攻撃魔法を使うことが出来るようになるはずだ──
まずは魔力の色を変化させる。
炎の魔法を実際に食らったことで、大体の感覚は掴めている。
十分くらい試行錯誤していると──
俺の透明な無属性の魔力は、赤色へと変化していた。
「これが火属性の魔力か──」
俺は念のため部屋の外に出てから、半透明の赤色の魔力で、炎をイメージする。
すると手のひらの上に、燃え盛る炎が具現化された。
「できた!! これを飛ばして攻撃に使えれば──」
俺は魔力で作った炎を、ゆっくり動かしてみる。
炎はイメージ通りに、俺の周りを動いてくれる。
次に炎を大きくしたり、小さくしたりといった出力の調整も試してみる。
これもイメージ通りに調整出来た。
次はいよいよ、標的に魔法を飛ばして攻撃する訓練だ。
近くにあった岩を的にして、当てる練習をする。
試しに何度かやってみた。
炎が移動して岩に当たるイメージだとスピードが出なかったので、スリングショットでパチンコ玉を飛ばすイメージに変えてみた。
最初よりはずっと速く、勢いに乗って炎が飛んでいく。
イメージしだいで魔法を飛ばすスピードは、速くすることが出来る。
練習をくり返して、速度と標的に当てる精度を追求していく。
ある程度慣れてくると、スリングショットのイメージが無くても『魔力で炎を飛ばす』イメージがしっかり出来るようになった。
さらに、まっすぐ炎を飛ばすだけではなく、軌道を変化させたり途中で停止させることまで出来るようになった。
炎の魔法は高威力だ。
標的にしていた岩が、炎で溶けて穴だらけになっている。
この威力の攻撃を、遠距離から飛ばせる。
魔法使いというのは、この世界で当たりの職業だと思う。
「今日はこのくらいにしておくか」
MPがほとんど底をついていた。
眠って回復しよう。
次の日は魔法属性の色を、火の赤から別の色に変えてみる。
赤から茶色へと変化させて、石をイメージして具現化を試みる。
すると魔力から土は創り出されるのだが、攻撃に使えるような硬い石にはならない。色を微妙に調整しつつ、狙ったイメージで具現化できるまで挑戦し続ける。
なかなか上手くいかなかったが、三日ほどやり続けるとイメージ通りの硬い石が創れるようになった。
それから土魔法の練習をこなす。
魔力を無属性から土属性に変化させて、石を作り出しては飛ばすをくり返す。
一連の作業工程の速度を上げて、具現化させる石の数も増やした。
石だけではなく、砂や土も作ってみたりした。
それぞれの魔法の感覚を覚えて、イメージした瞬間に狙い通りの土が創れるまで練習する。
魔法で作った石で家を作れないか空き地で試してみたが、魔法で作った石や土は一週間もすれば自然と崩れて消えていた。
魔法で作った物質は、込めた魔力が無くなると崩壊する。
魔法というのはそういうものらしい。
「そのへんの石も動かせるかな?」
俺は近くに落ちていた石を拾って、土属性の魔法を込めて飛ばしてみた。
ヒュッ……!!
魔法で作った石よりは動かしにくいし、魔力消費の燃費が悪い。
使えることは使えるが、魔法で石を作った方が効率が良い。
土魔法を使うコツを掴んだところで、魔物相手に実戦で使ってみることにする。
東の平原の、第一領域だったら大丈夫だろう。
「スライムを狙うか──」
東の平原には川が流れているせいかスライムが多い、今日はそっちに行こう。
今日はずっと小雨だったのだが、討伐に向かう時間はタイミング悪く大降りになってきた。
「今日は雨か……だがまあ、これから行くところは大丈夫だろう」
今日は一日、雨が降り続いていた。
夜になってから、さらに勢いが増してくる。
俺はかまわずに、東の平原へと向かった。
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