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農場奴隷編

第20話 傀儡の魔術師 B

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 避ける暇はない──
 魔法攻撃が来ると予想はしていた。

 対抗策として、自身の魔力を防壁として周囲に展開していた。

 それによって敵の魔法を軽減できてはいるが、それでもHPが一気に51/97まで減っている。
 服や装備は焼け焦げていて、左肩を中心に火傷がひどい──
 あと二発、さっきのを喰らうと死ぬだろう。

 傀儡の魔術師は、また杖に炎の魔力を集め出した。




「……ああ、これは詰みだな」

 奥の手を使う。

 俺は弓を異空間に仕舞うと、はがねの剣を装備。
 そして──
 スキル『空間移動』を発動した。



 次の瞬間。
 目の前にある傀儡の魔術師の頭へと、剣を振り下ろす──

 ズシャッ。

 俺の剣は、傀儡の魔術師の頭から胴体の真ん中までを両断した。





 しかし、戦闘はこれで終わりではない。

 ドゴッ……ォオオン!! 

「グアッ……」

 傀儡の魔術師の護衛として控えていたウッドマンの攻撃が、剣を振り下ろした直後の俺の身体に叩きつけられた。

 重量のある敵の攻撃が直撃し、数メートル吹っ飛ばされる。



 右腕から胸にかけて、衝撃が突き抜ける。
 飛ばされたことで衝突ダメージは上手く抜けてくれたが、それでもHPが三分の一以下まで削られている。

 俺は右手が動くか確かめてから、はがねの槍に装備を切り替えた。

 敵の長い手足に対抗するために槍を選択。
 これでリーチの差を埋める。



 ウッドマンの攻撃力は高い。
 まだ余力があるFPで身体の強度を上げて、防御力を補う。


 敵の様子を伺うと、不意打ちで削った身体の傷が塞がっている。
 再生能力があるのか、それとも身体を圧縮して傷を塞いでいるのか──



 槍で連続攻撃を繰り出し、敵の身体を削っていく。
 傷が塞がる様子を見ると再生ではなく、穴の開いた個所に周りの身を寄せて塞いでいるように見える。

 このまま攻撃し続ければ敵を無力化できるだろうが、ウッドマンの膨大な体積を槍で削り切るのは現実的ではない。


 俺にとって救いなのは──
 ウッドマンの操り主であった傀儡の魔術師が死んだことで、敵の動きが鈍くなっている。傀儡の魔術師の護衛時のような、素早さで動かない。


 威力はあっても大振りでスローな攻撃を避けるのは難しくないし、闘気で身体の強度を上げれば耐えることも可能だ。


 こちらの攻撃は命中するが、敵の攻撃は当たらない。
 優勢に戦えているが、決定打が無い。

 できれば──
 一撃で勝負を決めたい。



「魔石を狙うか……」

 モンスターはその体内の魔石を破壊すれば、倒すことが出来る。
 ウッドマンの魔石の位置は、空間探知で確認できる。


 ウッドマンはこちらに顔を向け、ゆっくりと腕を大きく振り上げる。
 顔には目が付いてないのに、こちらを見る動きに意味はあるのだろうか?


 まあいい、俺は槍に闘気を込めて、体には魔力を巡らせる。
 ウッドマンは振り上げた腕を俺に向かって振り下ろす。

 俺は魔力で身体能力を向上させ、敵の攻撃を回避して──


 ウッドマンの魔石に狙いを定めて、槍を繰り出した。
 俺の槍がウッドマンの身体を貫き魔石を砕く。


 ウッドマンは急速に力を失い、地面へと倒れ込んだ。

 どぉおおおおおおんん!!

 勝負はついた。





 離れた場所でずっと様子を伺っていたスラ太郎は、ウッドマンが倒れた様子を見てこちらへと近づいてくる。

 俺はウッドマンの半分に割れた魔石と、傀儡の魔術師の魔石を回収する。



 戦闘中で確認できていなかったが──
 傀儡の魔術師が『魔術師の杖』をドロップしていた。


*************************
魔術師の杖 (所有者ユージ)  
強度  115
魔力増幅  五十パーセント
品質A
************************* 

*************************
ウッドマンの魔石 (土属性) 
所有者 ユージ
魔石値 000225
*************************

*************************
傀儡の魔術師の魔石 (土属性)
所有者 ユージ
魔石値 000336
*************************

 俺は回復薬で体力と傷を癒してから、農場へと帰還した。
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